‥俺は恵まれている。もし恵まれていなくても、頑張るのは同じだったと思う。でも、俺の左手(ギフト)を守ってくれてありがとう。お父さん4

 

 「左利きは、早いうちに矯正した方がいいんじゃないかと思って…」

 「いや、そんな事ないって…」

 「うちでは昔から、そうしてるしねぇ…」

 

 「あのでも、すいません。それだけは…少しでも人と違うものを持っているというのは、きっとこの子の力になるので…。他の事には、口を出しませんから。」

 『ハイキュー』若利君母と父、祖母の会話、そして、再び父の言葉です。

 

 

 左利きの人の脳は、右利きの人の脳と比較して、左右差が少ない事が様々な研究により、明らかになっています。

 生まれた時から10人に1人のマイノリティである左利きは、右利きと同じように行動するという課題が与えられています。

 右手が上手く使えないのに、様々な右利き用の道具を使わなければならなかったり、レジでのお金の支払いも、ICカードのタッチも、ほとんど全てが右利きの為に作られています。

 その為「どうしたら上手く出来るだろう」と考える場面が多く、快適に生きていく為に脳を動かし続ける為、9割の右利きからみると天才若しくは変人と思われるような脳の使い方をせざるを得ないのです。

 10人に9人の多数の枠に収まらず、独自の脳の使い方をしている事が、左利きには天才が多いと言われる最も大きな要因であると思います。

 

 

 人は、右利き・左利き問わず、ほとんどの人が左脳で言語処理を行っています。

 右利きの人は、右手で文字を書く時、左脳の運動系脳領域を使いながら、左脳の言語領域で言葉を生み出しているので、左脳の中で、言語処理をし、それを文字にするという作業を行っています。

 これに対し、左利きの人は、左手を右脳で動かしながら、左脳の言語領域で、言語処理を行っています。

 その為、左利きは、右脳と左脳両方のネットワークを同時に使わないと、文字を書く事が出来ません。

 

 これらの条件から、左利きは、言葉を使って考えをまとめるのに時間が掛かる傾向があります。

 言語処理が得意な左脳を常に右手で刺激している右利きと異なり、左利きは非言語情報を扱う右脳を主に働かせています。

 左利きは、右利きと比較し、言葉に置き換えて言いたい事を発するまでに使用する脳のルートが、少し遠回りなのです。

 また、自分の言いたい事のイメージと、言葉を繋ぐ前に話をしてしまう事で、周囲からは、左利きの人の発言が本題からズレて聞こえる事も多いです。

 

 人の脳の発達には、年齢による旬のようなものがあります。

 生まれたばかりの赤ちゃんは、手足をバタバタ動かす運動領域、触れたものを感じる触覚領域、お母さんの声を聞き分ける為の聴覚領域を、発達させていきます。

 まだ言葉を話せない赤ちゃんは、右脳を活発に働かせます。

 そして、年齢を重ねる中で、言語領域を司る左脳を育てる旬の時期となっていきます。

 

 多くの右利きの人は、言葉が話せるようになる時期には、脳の他の領域も、大人に近い程度の機能を発揮するようになります。

 つまり、年齢を重ねた以降は、右脳を使う事は少なくなり、言語領域である左脳を使う事が多くなるのです。

 しかし、左利きの多くは、言語を扱う時に、左脳と右脳の両方を使います。

 つまり、左脳が育つ時期でも、左脳だけを集中して使うのではなく、右脳も並行して使っているのです。

 ある時期では、これが言葉を使いにくいと評価されてしまう事もあります。

 

 しかし、見方を変えれば、右脳と左脳の両方をじっくり、マイペースに育てる左利きは、大器晩成型と言う事も出来ます。

 子どもの頃から、ずっと右脳を動かしている左利きは、確かに言語を司る左脳の成長はゆっくりかもしれません。

 ただ、使える脳の領域が、右利きよりも拡い左利きには、様々な可能性が隠れています。

 

 若利君のように、神様からの左手(ギフト)を大切にしていきましょう。