「左利きは、早いうちに矯正した方がいいんじゃないかと思って…」
「いや、そんな事ないって…」
「うちでは、昔からそうしてるしねぇ…」
「あのでも、すみません。それだけは…少しでも人と違うものを持ってるというのは、きっとこの子の力になるので…。他の事には、口を出しませんから。」
『ハイキュー』若利君母家族と父の会話、そして、再び父の言葉です。
日本の人口全体で見ると、左利きの割合は、10%と言われています。
面白い事に、この10%という数字は、時代や国・文化の違いがあっても、変わりません。
では、右利き・左利きとは、どのように決まるのでしょうか?
利き手が定まる理由は、現在3つ考えられています。
1つ目は、人は左側に心臓がある為、心臓を守りながら右手で戦う必要があったとする説です。
2つ目は、すでに石器時代には右利きの数が多かった為、右手を使う道具が多く作られてきたからという環境説です。
3つ目は、より複雑な道具を活用し獲物を狩る為に、言葉によるコミュニケーションが必要となり、言語脳である左脳を発達させた人は、左脳が働きをコントロールする右手をよく使うようになったという説です。
また、現在では、人以外にも、ほとんどの脊椎動物が、行動上の左右差を示す事がわかっています。
カエル・ニワトリ・魚等は、左側から接近する捕食者に対してより速く反応する一方、物を扱う時には右側寄りとなります。
このような左右の偏りがあっても、人以外の脊椎動物においても、10~30%の割合で、その偏りとは反対の偏りを示す個体がいます。
また、子どもの性格・知能・病気の発症率等、子どもが持つほとんどの要素に、親の遺伝が関係している事が、最新の科学ではわかってきています。
そのように考えると、遺伝も右利き・左利きを決定する要因の1つと考える事が出来ます。
実際、両親が共に右利きの場合、左利きの子どもが生まれる確率は9%であるのに対し、右利きと左利きの親の組み合わせの場合は19%、両親共に左利きの場合は26%の確率で左利きの子どもが生まれる事が示されています。
ただ、現段階において、利き手を決定づける遺伝子は、見つかっていません。
…ダーウィン、アインシュタイン、ピカソ…
左利きには天才が多いと言われますが、歴史を振り返ると、確かに左利きの天才が数多く存在します。
左利きの天才達は、右利き社会の中で、これまでの常識を覆すような革新的な役割を果たした人物が多いのも特徴です。
左利きに天才が多いといわれる理由は、利き手が異なると脳の使い方が異なる事と、右利き社会の中で常に左利きは考えながら行動をしなければ生きていく事が出来ないという環境説の2点があげられます。
日々の生活で、同じ事を同じように経験しても、右利きと左利きでは、感じ方、つまり脳の使い方が異なるのです。
インプットの仕方が異なれば、自然とアウトプットの仕方も異なります。
その為、10%の左利きが、大多数の右利きと発想が異なるのです。
右利きの人が無理に左利きにする必要はありませんが、生活の中で少しでも左手を使う事を実践していけば、今まで開通していなかった脳の路線が繋がり、今までにない発想が出来る可能性が格段と上がる事を約束します。