…嬴政の笑顔‥それはー身体を灼く憎悪を少しでも和らげるためにーわずか7歳の子どもが本能的に身につけた‥哀しき鎧であった…
「それでも、いつかは許してくれるでしょうか?」
「許す?ふざけんじゃねぇ‥お前は、何をヘラヘラしてんだよ?どうして怒らない?どうしてあいつらを憎まないんだよ?」
「え‥?」
「あのことは‥長平のことは‥アンタには何の責任もないんだ‥アンタは不当に‥傷つけられているんだよ‥だから、無理しなくていい。泣きたかったら泣け。腹が立ったら怒れ。自分で自分を殺して‥感情を誤魔化すんじゃない。」
「怒る‥?泣く‥?そんなこと‥僕はしちゃダメですよ‥だって僕は‥人殺しの国の子どもで‥呪われている子で‥だから‥だから‥。」
「たとえ、親がどんな悪魔だろうと、その子どもに罪なんてあるもんか。アンタは、悪くない‥何も悪くない‥アンタは、ヒトの痛みがわかる優しい人間なんだ。この傷は、その証拠‥罰や呪いなんかじゃないよ。嬴政、アンタは‥生きたいように生きていいんだよ。」
「生きたいように生きる‥僕が‥?うわぁああああああ。」
「そうだ政。それでいいんだ。泣きたきゃ、思い切り泣け。怒りたきゃ、怒れ。」
「くそ‥何で僕が‥僕は何もしていないのに‥僕は何も‥大嫌いだ‥みんな大嫌いだ。くそくそくそぉおおおおお。」
…その日、嬴政は生まれて初めてー己の感情を発露した…
『終末のワルキューレ』後の始皇帝・嬴政と春燕の会話です。
あなたのネガティブな感情を引き起こすトリガーは、解決出来ていない痛みを自分がどこに溜め込んでいるのかを教えてくれます。
ネガティブ感情の1つ1つには、メッセージが隠されています。
しかし、多くの人達は、それを知る方法を知りません。
知らないせいで、感情は、人生全体を覆う慢性的な問題となっています。
感情が送ってくれたメッセージを活用出来ず、私達は、その感情を心の中に閉じ込めてしまいます。
そして、その感情を再び呼び起こすような状況を、全て避けようとします。
このような抑圧された感情が募っていき、そのせいで周囲の世界に対して、過剰に敏感になっていきます。
表面的には、感情的な反応を引き起こす存在が問題であるかのように思いますが、そうではない事を覚えておいて下さい。
問題は、自分の感情をどのように扱っていいのか分からない点であり、その為に必要な感情処理のスキルを持ち合わせていない事なのです。
感情が、何によって引き起こされるかは、人により異なります。
あなたは、どのような感情を抱く事が多いでしょうか?
その感情の背景には、必ず理由があります。
たとえば、怒りは、変化を求める気持ちです。
悲しみは、失望です。
嫉妬は、自分が本当に求めているものを教えてくれます。
このような自分の感情を動かすトリガーを知る事が出来れば、自分をより深く理解する事が出来ます。
大切なのは、その感情を克服する事ではなく、その感情が何を伝えようとしているのかに、耳を傾ける事です。
自分の感情に向き合わないままでいると、その感情は慢性的な問題となり、一生涯あなたを縛り、苦しめる事になります。