「あなたは、張り詰すぎです。過酷な状況こそ、こうして休息はしっかり取らないと。」
「そーいうもんかな‥。」
「そーいうもんです。それに夫婦なんですから、お背中流すのに一々照れてどうするのですか?」
「‥照れてるわけじゃない。苦手なんだ風呂。緊張や戦の勘が湯に溶けていくようで‥。」
「私がご武運を濯いでいると?」
「そ、そういう意味ではないっ。」
「あなたは、張り詰め過ぎです。休める時はしっかり休まないと、本当の戦いの前に倒れてしまいます。」
「本当の戦い?何か控えていたか?」
「いいえ。人生という名の戦いです。平穏に真っ当に己の信念に寄り添いながら、時に棹差し時に隠し‥それでも決して手綱は離さない。川中島だって目じゃない。長い長い人生という名の戦です。」
『地獄楽』画眉丸夫婦の会話です。
結婚は、幸せだと思いますか?
仕事で気苦労をした中、帰ってきてまた気苦労をする事を想像してみてください。それは幸せでしょうか?
自分の好きな事をして過ごしたい僅かな時間を奪われる事が、幸せでしょうか?
アメリカでは、結婚の40%が離婚に至っております。
2019年の厚労省の調査では、日本の離婚率は35%となっています。
さらに、アメリカでは、離婚に至っていないが別居中の夫婦が10~15%、同居を続けているが慢性的に不幸な既婚者が7%いるとされています。
日本においても、家庭内別居の経験がある夫婦は44%であるというデータもあります。
つまり、50%以上の結婚をした夫婦が、明らかに幸せな結婚になっていないのです。
しかし、結婚をすれば、より健康で幸福になれるという動画や記事・研究は、世の中に溢れています。
ただ、上記の様な動画や記事・研究は、間違っています。
そうした報告の殆どは、単に既婚者と独身者の幸福度を調査して比較し、既婚者の方が高い事を見出し「結婚すると、健康で幸せになれる」と得意げに言っているに過ぎません。
これは「生存者バイアス」と呼ばれる間違いを犯しています。
「結婚する事が人を健康や幸せにする事」を調べるのであれば、離婚者・別居者・死別者等を独身者と一緒にするのではなく、既婚者と一緒にするべきです。
そうしなければ、売れている声優ばかりを調査して「声優になる事は、素晴らしい職業選択である」と言うようなものです。
では、結婚は健康にどのような影響をもたらすのでしょうか?
あなたが結婚というゲームの勝者であるなら、プラスの効果がたくさんあります。
心疾患・癌・認知症等、様々な病気の発症や死亡率・寿命等、全てが改善されます。
しかし、不幸な結婚生活を送っていると、1度も結婚をしていない人と比較し、健康状態が著しく悪化します。
結婚生活が破綻していると、病気になる可能性が35%高くなり、寿命が4年短くなります。
9,000人を対象にした調査によると、離婚者及び死別者は、そうではない人と比較し、健康問題を20%多く抱えていたという結果が出ています。
さらに驚くべき事に、上記の様なマイナスの影響は、再婚をしても持続する事がわかりました。
再婚者は、離婚をしなかった人と比較し、深刻な健康問題を抱えている人が、12%多かったのです。
また、離婚経験のある女性は、再婚してもなお心疾患になる可能性が、そうではない人と比較し、60%も高かったのです。
円満な結婚生活を送っていれば、健康にポジティブに影響し、幸福度が高まる事は間違いありません。
裏を返せば、50%以上の良い結婚に恵まれない人達は、想像以上に、健康にネガティブな影響を受け、幸福度も著しく低下するのです。
2012年のオーストラリアの研究では、未婚者・既婚者・離婚者を含めた「結婚スペクトラム」全体でみると、不幸な結婚生活を送っている人が、最も幸福度が低いと結論付けています。
誰かといる中での孤独よりも、1人でいる孤独の方が、健康にも、幸福度にも、ポジティブに働きます。
結婚は健康や幸福を保証してくれるものではなく、大勝ちか大負けかというギャンブルのようなものです。
さらに大負けの確率が50%を超える為、ギャンブルよりも、質が悪いかもしれません。
このように考えてくると、結婚=幸せではないという世界観が、日本においても定着してきているのは、正しい事であると思います。
それでも、あなたは、結婚をしますか?
それでも、あなたは、結婚を幸せなものであると他者に伝える事が出来ますか?