うるさい。五月蠅い。煩い。調子よく騒ぐな。都合よく目を向けるな。誰も私に、期待してなかったくせに。誰もアタシを視てなかったクセに

 

 …鏡の中に思い描くアタシは、理想のアタシ。強くて、恰好良くて、完璧なアタシ…

 …けれど‥私は‥完璧じゃないから…

 

 「第二のエラズリー!?ニュージーランドの悲願!?勝手に背負わせないで。誰も私を、視てくれなかったクセに。」

 …じゃあ、貴方は誰(だあれ)?…

 

 「アタシは‥」

 …誰かの代わりじゃない‥誰かの夢じゃない‥私は、フォークインだ…

 『ウマ娘シンデレラグレイ』フォークインの脳内言葉と言葉です。

 

 

 

 あるノルウェーの画家が20代の時に脳内で反芻していた言葉があります。

 「汝自分の姿を記せ」

 

 これまで、時代に合わせた絵を教えられるままに描いていた画家は、そこから自分の姿を描くようになります。

 彼の代表作の1つ『病める子」は、結核で亡くなった姉を描いた作品です。

 ところが、その作品を新聞において「近づけば近づく程、何が何なのかわからない」と記されてしまいます。

 

 

 彼は、家族の温かみの中で育つ事が出来ませんでした。

 5歳の時に母を亡くし、父からは虐待を受け、唯一の理解者であった姉も結核で亡くしてしまいます。

 父との溝は埋まらぬまま、父の反対を押し切り、彼はパリに留学する事を決めます。

 

 父と会話も交わさず、旅立った彼が、船上から見たのは、正装をして見送る父の姿でした。

 それが、彼が見た父の最期の姿でした。

 彼の決意はさらに固まり、魂が感じたままを描く事を、心に決めます。

 

 

 しかし、彼を待っていたのは前例主義がまかり通る芸術の世界、否、世界でした。

 前例主義しか教えないパリの学校を辞め、彼は、行く宛もなく、旅をします。

 そこで、出逢ったのが、ゴッホでした。

 

 亡きゴッホの残した作品だけが、彼と心を通わせる事が出来たのです。

 行く宛もない旅の中、彼は描く事だけは、やめませんでした。

 偶然か必然か、そんな彼に幸運が降り注ぎます。

 

 ドイツから、個展の誘いを受けるのです。

 彼は、魂が感じたまま描いた作品を提出し、個展を開催します。

 しかし、ここでも新聞において「芸術の毒殺者」と称され、個展は1週間で打ち切りとなってしまいました。

 

 

 …ろくでもない年寄りの画家が吐いて捨てる程いる。そういう輩は、新しいものを見ると、逆上するものばかり…

 彼が、叔母に宛てた手紙の一部です。

 

 

 

 その出来事から、十数年経つと、彼の作品が高値で売れるようになります。

 作品を2枚売れば、家が建つ程の状況において、喜びを爆発させるばかりか、彼は、至って冷静でした。

 

 …値がついて初めて、私の絵を評価する。45歳になるまで、私の絵を気味が悪いと叫んでいたくせに…

 彼の手紙の一部です。

 

 

 後世に残る彼の代表作の殆どは、彼の作品に世界が見向きもしない頃、若しくは気味が悪いと世界が言っていた頃、つまり、彼が20代の頃に描いた作品です。

 誰もが知る彼の代表作『叫び』の空の部分には、彼のメッセージ(悪戯)が隠されています。

 …狂人にしか描けない…

 

 

 

 …うるさい。五月蠅い。煩い…

 …調子良く騒ぐな。都合よく目を向けるな。誰も私に、期待していなかったクセに…

 …誰もアタシを、視てなかったクセに‥誰も私を…

 『ウマ娘シンデレラグレイ』フォークインの脳内言葉です。