「レーンをはさんだ向かい側に、安奈だけが自分の幸せであると言った設楽がいる。衛星帽とマスクから目だけが見えている。死んだ魚みたいに濁っている。雨の中、安奈を見つめていた時の目と全然違う。設楽は、給料のほとんどを安奈につぎ込んでいる。それを労働の喜びとするのは、逃げていることだろうか。設楽も自分も幸せだけど、他人から見たら哀れなんだろうか。」
「けれどこちらはこちらで、似たような目でその他人を見ている。友人の数は人間的魅力のバロメーターで、SNSに上げている素敵な写真は充実した日々を送っている証拠。楽しい人だと思われたくてみんな必死だ。自分は、そんな虚しいダンスはしたくない。」
「そんなふうに斜に構えて、けれど、実は、相手を否定することで劣等感だらけの自分を守っていることにも薄々気づいている。読んだはずのカードの裏。ミルフィーユのように折り重なった心理の層。そこから抜けだすための答えを清居は与えてくれた。」
「ーがんばれよ。」
「多分、それしかないのだろう。大学二年生。来年は就職活動。どれだけ言い訳を重ねて目を背けようとも、嫌でもがんばらなくちゃいけないときがきている。生ぬるく、痛みも憂鬱もない世界から、いつかは出ていかなくちゃいけない。怖い。面倒。嫌だ。」
『憎らしい彼』平良の心の中の言葉です。
私は、仕事でも勉強でも「頑張ろう。」と考えた時に、その仕事や勉強が嫌になります。
朝起きて「今日も、頑張ろう。」と思わなくてもいい環境を作る為に、考え、行動してきました。
その中で、心理学を学び「習慣は第二の天性なり」という考えに出会い、頑張らなくてもいい環境を構築していきました。
それでも、経験も能力も経済力も、何もない時には頑張るしかないと思います。
どのような言葉を飾ろうとも、前に進むには、本人が頑張るしかないのです。
「それでも清居のそばにいたいのならー。‥がんばろう。マスクの下でぼそりとつぶやいた。そんな自分が信じられなかった。がんばろうなんて大嫌いな言葉だ。無神経な人間がふるう言葉の暴力だと思っていた。‥でも、がんばろう。もう一度つぶやくと、設楽が目だけでこちらを見た。」
再び平良の心の中の言葉です。