ここに居る選手の中に、誰一人として負けを経験しない者など居ない。たとえ、この大会の結果が優勝であったとしても、強者ほどより上の強者に打ちのめされる。挑む者だけに、勝敗という導と、その莫大な経験値を得る権利がある。今日敗者の君たちよ。明日は何者になる?

 

 「今、空からちっちゃい隕石が降ってきて、それが頭に当たった奴居たら、そいつの事は可哀想がって、それ以外は要らない。敢えて可哀想という言葉を使うなら、可哀想と思われる事がカワイソウだ。」

 「井闥山負けた。負けた。これで全国三大エース全員敗退だ…」

 

 「あぁ~残念ですね。佐久早…。」

 「うん。もっと見たかったねぇ。…ここに居る選手達の中に、誰一人として負けを経験しない者など居ない。たとえ、この大会の結果が優勝であったとしても、強者ほどより上の強者に打ちのめされる。挑む者だけに、勝敗という導と、その莫大な経験値を得る権利がある。」

 「今日敗者の君たちよ。明日は何者になる?」

 『ハイキュー』佐久早の言葉と観客席からの声、そして、後の雲雀田の言葉です。

 

 

 マルセイユ、モナコ、バイエルンに3連敗を喫したパリには、ネガティブなニュースが流れています。

 エムバぺとネイマールの不仲・モナコに大敗した後一早くロッカールームに戻ろうと言ったキャプテン・マルキーニョスに対し、モナコまで来てくれたファンに謝罪をするべきだと意見が対立した副キャプテン・キンペンべ・2か月前に世界一となり伝説となった男に対してバイエルン戦後「何故プレスをしないのだ。」と批判する地元紙・モナコ戦のハーフタイム、フロント陣がロッカールームに現れ選手に叱責する事によるフロントと現場との確執等。

 

 私は、応援しているチームや選手が、負けたり、批判にさらされている姿が好きです。

 その理由は、負けや批判から、どのように立ち上がるのかまでの物語を観る事で、生きる力が貰えるからです。

 

 ピッチ上以上の関係を築く必要はありません。

 意見が異なる事も当たり前です。

 …ラモス・メッシ・ネイマール…

 15年以上に渡り、負けや批判を、実力で跳ねのけてきた男達を観ているだけで、生きる力を貰う事が出来ます。

 

 

 

 モハメド・アリは、22歳で史上4人目のヘビー級チャンピオンになります。

 「俺は偉大だ。」と常にビッグマウスで観客を楽しませ、有言実行で実力と結果を残していったアリは、国民的スターとなります。

 

 そんなアリの運命を変えたのが、ベトナム戦争への徴兵でした。

 アリは「ベトコンは、俺を差別しないし、俺がベトコンを殺しに行く理由は何もない。」と言い、徴兵を拒否しました。

 今振り返ればアリの言葉は誰もが納得出来ますが、当時のアメリカはまだベトナム戦争への反戦運動が起こる前であった為、アリに対し、非国民という声がアメリカ中から届きました。

 

 マスコミは「ボクシングの技は自慢するが、軍隊に召集されると、追い詰められたネズミみたいにキーキーと泣き叫ぶ。この小僧のタイトルを剥奪すべきだ。」等と連日報道しました。

 アリは、徴兵忌避の罪で裁判にかけられ、無敗のまま、タイトルとボクシングライセンスを剥奪されてしまいます。

 

 ボクシング界から追放されたアリは、大学での講演活動を実施する事で、食いつないでいきます。

 腐ってもおかしくない状況の中でも、アリは、講演にも全力で挑んでいきます。

 鏡の前で練習して、自分で講演内容をテープに録音し妻とともに入念に準備をして、講演に挑んだのです。

 

 その後、最高裁はアリに対する有罪判決を却下します。

 この時、アリは30歳になっていました。

 ボクサーとして最盛期の時に、3年5カ月もの間、アリはボクシングが出来ず、国家との戦いを強いられました。

 

 アリの復帰戦は、アリと同じ無敗のヘビー級チャンピオンとの試合でした。

 復帰戦、アリは判定で負け、プロ生活で初めての敗北を経験します。

 

 最早アリの時代は終わったと思われる中、アリは負けを喫した相手に再び挑み、勝利します。

 その後、タイトルも奪還します。

 39歳で引退するまで、アリは3度タイトルを獲得し、19度の防衛を果たします。

 

 

 人生が思い通りにいかない時、どのように過ごすかで、その人の真価が問われます。