「高羽ァ、いつまでそないことしとんねん。やめーや。こっちまで辛気臭ァなるわ。」
「‥うす。」
「オマエいくつやったっけ?」
「35っス。」
「ほなもうやめてまえ。この業界遅咲きの奴、よー分からんキッカケで、急に売れる奴ぎょうさんおる。でも、そいつらは急におもろなったわけやない。元々おもろかったけど、埋もれてただけやねん。オマエは、そうちゃうやろ。東京があぁなってん。悪いことは言わん。オマエにできる向いてることをせぇ。」
「‥俺は嫌いやなかったで。髙羽のネタ。」
「ケンさん‥。」
「アイツも、オマエも勘違いしとる。おもろなくても、売れる奴は売れんねん。」
「一発屋的な話ッすか?」
「ちゃうわ。ずっと売れ続ける奴には、二種類おんねん。ずっとおもろい奴と、ずっと自分のことおもろいと勘違いできる奴や。オマエは、どっちや。」
『呪術廻戦』名もなき芸人先輩と髙羽の会話、そして、ケンドーコバヤシと髙羽の会話です。
いつからか、私は、お笑い芸人をかっこいいと思うようになっていました。
20代の時、友達にそのような話をしても、誰も理解してくれませんでした。
「美しい漫才でした。」
M1グランプリ、さや香のネタ後の松本人志の好評です。
今年、講師等をする機会が多かった為、好評をする事も多かったのですが、好評はやってみると想像以上に難しいものです。
私自身も優勝したウエストランドのネタで、一番笑いました。
「今の時代は人を傷つけちゃいけないってなっているけど、あなた方がスターになってくれたら時代が変わる。そういう毒があるのが面白いので、これが王道になってほしいという願いを込めて。」
ウエストランドネタ後の、立川志らくの好評です。
私は、気付くと、久々にテレビの中の人の言葉を、忘れまいとノートにメモしていました。
個人的には、さや香とウエストランドのネタが、とても楽しく、どちらも、高齢者が年金を貰い過ぎている事や高齢ドライバー問題、芸以外のドキュメンタリーの必要性等、少しズレると人を傷付ける可能性もあるが、誰もが言いたい内容をネタとして見事に消化していました。
まさに、松本人志の言葉通り、美しい漫才でした。
ネタの中だけでは、毒を言ってもいい。
そんな時代に再びなるのかも、しれません。否、そういう時代の方が、楽しいものです。
そのような事を考えていたら、ふとバルサの歴史を思い出しました。
1939年スペイン内戦を治めたフランコ政権は、共和国を支持していたカタルーニャを徹底的に弾圧しました。
処刑にはじまり、カタルーニャの言語であるカタラン語を話す事さえも禁止されました。
しかし、唯一カタルーニャの人々が、カタラン語を話せる場所がありました。
それが、バルサのホームグランド、カンプノウです。
これが、バルサがクラブ以上の存在と称される由来です。
ネタの中だけでは、毒を言ってもいい。
偶然か、必然か、同じ夜に、クラブ以上の存在が生んだ史上最高の選手、メッシが世界一となりました。
これ程、笑った夜も、泣いた夜もありません。
新しい王者の誕生と、王者となり伝説に幕を閉じる者。
相対する王者の誕生を、観る事が出来、とても気持ちが高揚しています。