「メッシのラストマッチです。パリでのメッシの雄姿、目に焼き付けて頂ければと思います。今シーズンは、16ゴール16アシスト。昨シーズンは苦しみましたが、やはり環境に適応すると彼が生み出すパフォーマンスは、本当に素晴らしいものがありました。あなたが印象に残っているメッシのゴールは何でしょうか?クレルモン戦では、オーバーヘッドを決めた事もありました。様々なゴールがパリジャンの印象に残っています。」
「そして、セルヒオ・ラモスも、今季限りでの退団が決まっています。彼が注ぎ込んだキャプテンシー、それからポジティブな空気というのは、間違いなくパリが苦しんでいた時期に活かされていたと思います。」
メッシ・ラモスのパリでのラストダンスに贈る西さんの言葉です。
6月3日ラモス、6月4日メッシのパリ退団が発表されました。
今シーズンのヨーロッパにおいて、私が最も感動していたのは、ラモスからメッシにパスが繋がる瞬間でした。
20年近い時間、ヨーロッパフットボールを追いかけてきた人であれば、この意味が理解出来るはずです。
そして、今シーズン最も生きる力を貰った選手も、ラモスでした。
方や会長以上の存在になった為、方やクラブの財政上の問題の為、ラモス・メッシの両雄は、2021年生涯を捧げると誓ったチームを自らの意思に反して離れざるを得ない局面に立たされました。
どんなに実績を残した偉大な選手であれ、チームの一員であり、所謂会社員なのです。
どんなに実績を残した偉大な選手でも、会社が下した決断に従わざるを得ない局面がある事を、痛感した2021年夏でした。
そんな不運が、2人を引き寄せます。
マドリーのカピタンとバルサの伝説が、同じユニフォームを着る日が来るとは、誰もが予想出来ませんでした。
人生とは、コントロール出来ない所で化学反応が生じる事が醍醐味なのかもしれません。
私自身、2022年7月2人を国立競技場で観る事が出来た事に、充実感を覚えています。
今年もパリは来日しますが、カピタンと伝説は来ません。
若しかしたら、2度逢ってしまうよりも、逢うのは1度だけで良かったのかもしれません。
私は、メッシがコーナーキックを蹴る事に、ずっと反対していました。
その理由は、メッシはコーナーキックを適当に蹴る事が多いからです。
しかし、今シーズン後半、メッシはボールにメッセージを乗せ、コーナーキックを蹴っていました。
その理由は、ラモスです。
あの覇気で「俺に寄こせ。」と訴えられたら、メッシですら答えざるを得ません。
若しかしたら、スペイン代表監督がラモスを招集していたら、ラモスはパリに残っていたかもしれません。
若しかしたら、アルゼンチンがワールドカップで優勝していなかったら、メッシはパリに残っていたかもしれません。
…ロナウド・ラモス・メッシ…
私の中学時代からのいつもの光景が、終わりを迎えようとしています。
しかし、起こる事全ては途中経過です。
死ぬまで全てが途中経過なのです。
残された家族や語り継がれる物語の事も考えれば、死すら途中経過です。
人生には、勝ち逃げも負け逃げもありません。
勝ち逃げしたと思っても、残された家族の不幸が始まるかもしれません。
負け続けたまま終わったと思われた人生が、時代の価値観が変化する事で、勝者の物語として後世に語り継がれるかもしれません。
最後に「評する人も、評されるも人」勝海舟の言葉通り、ラモスとメッシの最後の1年を西さんの実況で聞く事が出来て、幸せでした。
中々フットボールを観る時間を作り出す事が困難な中、西さん実況のパリの試合は全試合観る事が出来ました。
22/23シーズン、西さんの実況とラモスの姿が、私を何度も救ってくれました。