「非術師は嫌いかい?夏油君。」
「分からないんです。呪術は、非術師を守るためにあると考えていました。でも最近、私の中で非術師の‥価値のようなものが揺らいでいます。弱者故の尊さ。弱者故の醜さ。その分別と受容ができなくなってしまっている。非術師を見下す自分、それを否定する自分。術師というマラソンゲーム。その果ての映像(ビジョン)があまりに曖昧で、何が本音か分からない。」
「どちらも、本音じゃないよ。まだ、その段階じゃない。非術師を見下す君。それを否定する君。これらはただの思考された可能性だ。どちらを本音にするのかは、君がこれから選択するんだよ。」
『呪術廻戦』九十九と夏油の会話です。
「兄に電話して、もうこんな自分なんて死んだ方がいいと言ったら、死んでくれって言われましたよ。こんな事ありますか?実の兄弟にですよ。もう訴えてやりますよ。障害者虐待の団体から、どこにでも。あの嫁に言わされているのかもしれません。あの鬼嫁ならやりかねません。」
私がケアマネジャー(ケアマネ)として、担当をしている高齢者(利用者)の息子からの電話です。
この息子は、統合失調症を抱え、1度離婚をし、2度自己破産をしています。
家は、ゴミ屋敷で、歩く事もままなりません。
それでも、毎日の様に、聞きもしないレコードを注文し、廊下や階段に積み重ねられていきます。
1ケ月に1回程度、上記の様な状態となり、私を始め、区役所や障害者支援センター、地域包括支援センターに、怒りながら、泣きながら、電話をしてきます。
先週の金曜日は、弊社に、12回電話がありました。
百歩譲って、自分の辛い気持ちを聞いてほしくて電話をしてくるのなら、良いのですが、必ず、誰かを悪者にしてくる所が、この人と関わり続ける中で「しんどい」と感じる所です。
私には、兄を悪者にした電話を掛け、区役所には私を悪者にした電話を掛け、障害者支援センターには区役所を悪者にした電話を掛けるのです。
私は、2013年から高齢者を対象にしたケアマネジャー、2015年から障害者を対象にした相談支援専門員を、仕事の1つとしてやってきました。
その過程で「介護福祉士」「社会福祉士」「精神保健福祉士」「公認心理士」等の試験に合格し「主任ケアマネ」「主任相談支援専門員」の資格も取得してきました。
しかし、レベル上げをしていく度に、この仕事のネガティブな面ばかりが浮彫りとなり、この仕事は、若くて能力のある人がやる仕事ではないという結論に、現在は至っています。
高齢者だから、その家族だから、障害者だから、人を傷つけても良いのでしょうか?
高齢者や、その家族、障害者であれば、何を言っても、しても許されるのでしょうか?
先週、介護保険の認定調査で伺った高齢者の夫が「日本は、我々下々に厳しい国だ。」等という主張を私に、ぶつけてきました。
流石に頭にきてしまい「日本程、下々に優しい国はありませんよ。」と私の主張をぶつけてしまいました。
4,04倍。
この数字は、2022年12月におけるケアマネジャー(ケアマネ)の有効求人倍率です。
2023年における有効求人倍率の平均は、1,29倍である為、ケアマネになろうとする人がいかに少ないかが理解出来ると思います。
53歳。
2022年におけるケアマネの平均年齢です。
さらに、4人に1人のケアマネが60歳以上というです。私の肌感では、これらの数字よりも、実態は上であるように感じています。
私は、仕事の1つとして、ケアマネをやっています。
25歳からケアマネの仕事をし、27歳で独立をし、主任ケアマネの資格取得や更新もしております。
①求められる仕事に対して、給料が安い
②精神的に疲弊する
③資格の維持が大変
ケアマネがケアマネを辞める要因を分析すると、上記の3つに分類する事が出来ます。
冒頭の話が②精神的に疲弊する事の1つの例です。
精神疾患を持つ人と接する機会が多い医療・介護で働く人(精神科の病院や精神疾患を持つ人の家を訪問するヘルパー等)は、他の科や精神疾患を持つ人との関わりが少ない介護の仕事をする人と比較し、精神疾患になる確率が、5倍になります。
2018年に厚労省が実施した調査によると、過去1年間において「利用者・家族からハラスメントを受けた事があるか?」という質問に対し、60%のケアマネが「ある。」と答えました。
また、2019年労災請求数の1位の業界は、社会福祉・介護事業でした。
労災とは、労働者の業務上の事由または通勤による労働者の傷病等に対して必要な保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進等の事業を行う制度の事です。
社会福祉・介護事業が労災を請求する要因は、鬱病等の精神疾患です。
この原因には、利用者・家族等からのハラスメントも含まれています。
10年前の2009年と比較すると、社会福祉・介護業界の労災請求数は、4倍にもなっています。
ちなみに、労災請求数の2位は医療業界であり、鬱病で休職している人が多い印象がある学校教育は9位でした。
いかに、社会福祉・介護事業で働く人達が、精神的に疲弊しているのかを理解する事が出来ます。
そして、これは私の持論ですが、平均年齢が55歳である、所謂「おばちゃんケアマネ」は、上記に挙げた私のような疑問も持ち併せていません。
その為、ケアマネや相談支援専門員と話をしていても、仕事の愚痴に終始し、そこから建設的な話に繋がる事はありません。
寧ろ、建設的な話が期待出来ると感じていた分、こちらが落胆してしまう事ばかりです。
周知の事実でしょうが、区役者や地域包括支援センターで働く人も、然りです。
ケアマネの平均年齢層である50~60代の人であれば、特に何も考えずに、のらりくらりと仕事をしていく事も、いいのかもしれません。
しかし、20代・30代の人が、冒頭で挙げた例のように、何の生産性もなく、成長にも繋がらない、ただ気持ちをすり減らすだけの人達への対応の為に時間と労力を費やす事は、その人にとっても、その人の家族にとっても、日本においても、マイナスでしかありません。
若い人の時間や労力が、高齢者や人を裏切り続ける事ばかりする精神疾患を持つような人に使われる事は、日本にとってマイナスです。
投資という視点でみれば、未来ある若者の時間や能力が、未来の高齢者や精神疾患を持つ人達に投資されてしまっているのです。
感情的ではなく、論理的に考えれば、これは日本という国が没落している原因の1つであると推測する事が出来ます。
私の会社は「介護を受ける人が幸せになる為に、まずは、介護で働く人を幸せにする」という世界観を提唱しています。
その取り組みの1つとして、カウンセリング・スーパービジョン等の仕事をしています。
申し込みをしてくれる中に、ケアマネも多く、精神的に疲弊をし、鬱病を発症し、辞めていくケアマネが後を絶ちません。
そして、上記のように辞めていく人には、若くて能力のある人ばかりです。
残念ながら、ケアマネの殆どが上記のような悩みを分析したり、その為に行動する事等せず、特に何も考えずに日々の仕事をしています。
つまり「何か方法がないか」と考え、行動出来る数少ないケアマネが、私の所にまで辿り着いてるのです。
当初、私は「一緒に頑張っていきましょう。」等というメッセージを伝えていました。
しかし、最近では、異なるメッセージを伝えています。
そのメッセージとは「辞めた方がいいですよ。」というものです。
そして、仕事で抱えたストレスは、どうしても帰宅した後、家族に向いてしまいます。
20代・30代で、能力が高く魅力的な人であれば、素敵なパートナーや可愛い子どもと生活を共にしている可能性が高いでしょう。
安い給料の中、ストレスに囲まれ、仕事において成長する事もない中、家に帰り、その負の連鎖が、家族に向いてしまう事程、悲しい事はありません。
そのような現状を変えようにも、多くの50~60代の「おばちゃんケアマネ」は、そこに疑問すら感じていません。
若くて能力のある人が、そこを変えようとしても、ストレスがさらに積み重なるだけです。
それであれば、辞めてしまった方が、良い選択であるというのが、現在の私の解です。
70代や80代の高齢の政治家が、子育て世代が抱える悩みを理解する事が出来ない事と同じです。
50代や60代の世代が、仕事・育児・家事と時間のない20代・30代の世代の事を理解出来ないのは、当然の事かもしれません。
あなたがケアマネでなくても、是非、この現状を認識して、応援して頂きたいです。
ケアマネが「介護保険」の鍵である事は、間違いありません。
ケアマネがいないと、デイサービスを利用する事も、ヘルパーさんを利用する事も、ベッドを借りる事も、出来ません。
最も避けるべき事態は、誰も、ケアマネをやらない時代が来る事です。
どんな方面からでも良いので、この現状を理解して、応援して頂けると、幸いです。