そんなことを、こんなことを淀みなく話す羽川は、いつもの羽川と全く何も変わらなくて。まるで、そういう動作をする機械仕掛けのように

 

 「戸籍上は一応家族なんだけどね。何もかも関係が冷えすぎちゃっててさ。一つの家に3人が居るーっていうだけ。あの人たちはーただ世間体が怖くて、私を施設に入れることも、離婚もできなかっただけ。赤の他人。なの。だから、私にはお父さんもお母さんもいない。」

 「ーきっと今さら、私が歩み寄ろうとしたのが悪かったんだよ。うっかり、お父さんが家に持ち帰った仕事に口を出しちゃったから。ーだって、さ。考えてみてよ阿良々木くん。もし阿良々木くんが40歳くらいでさー見も知らぬ17歳の子供から知ったような口を利かれたとして?ちょっと腹が立っちゃって、かちーんときちゃっても、それは仕方がないと思わない?」

 「ごめんね。阿良々木くん。今、私、意地悪なこと、言ったよね。だってこれ八つ当たりだもん。いきなりこんなこと言われても反応に困るでしょ?だからどうしたって感じだし。そもそも阿良々木くんに全然関係ないのに。殴らせてくれてありがとうね。ちょっとスッキリ、した。」

 

 「ーそんなことを、こんなことを淀みなく話す羽川は、いつもの羽川と全く何も変わらなくて。ーまるで、そういう動作をする機械仕掛けのように。本当に何一つーいつもと何も変わらなくて。ー僕は羽川の何を知っているつもりだったんだろう。」

 「翼。この言葉にはたくす・たすけるという意味があるー‥らしい。親鳥が卵や雛を、その羽で護るように。庇うように。けれども自殺した羽川の母親は、どんな思惑でこの名を付けたのだろう。どんな役目(タスク)を羽川にー強いたのだろう。」

 「羽川を形容する美辞麗句は枚挙にいとまがない。だけどそれは羽川が役目(タスク)をこなすための仕事ーだったんじゃーないのか。僕は羽川をー誤解していた。羽川ならー困ったり悩んだりしないと思っていた。彼女なら、反省も後悔も嫌いも苦手もないと。傷つくことすらなく、幸せで当たり前なのだと。」

 『化物語』父親に殴られた羽川翼の言葉と、阿良々木暦の脳言葉です。

 

 

 人間の行動は、欲求が原動力になっています。

 欲求の中で最も基本的で重要なものを基本的欲求といい、生理的欲求と社会的欲求に分けられます。

 心理学者のマズローは、人間の欲求を以下の5段階に分けました。

  ①生理的欲求

  ②安全の欲求

  ③所属と愛情の欲求

  ④社会的承認の欲求

  ⑤自己実現の欲求

 この欲求は、①生理的欲求が満たされないと②安全の欲求が生じる事はなく、②安全の欲求が満たされないと③所属と愛情の欲求が生じる事はないというように、欲求を段飛ばしで満たす事はありません。

 三つ子の魂百までの言葉通り、赤ちゃんの時に生理的欲求や安全の欲求、所属と愛情の欲求が満たされていなければ、社会的承認を間違った形で求めてしまったり、自己実現という言葉に苦しめられたりしてしまいます。

 

 人と話していて「この人は、何故このような考えをするのだろう?」と感じる事があると思います。

 その時に、マズローの欲求階層説を思い出すと、その理由に気付く事が出来ると思います。

 長らく使われている理論には、それだけの価値があり、活用しない事は勿体ないです。