Googleは、ある決断を迫られていました。
当時、同社のトップデザイナーの1人であったジェイミー・ディヴァンが、Googleの検索ページに使う新たな青色のアイデアを出したのです。
ディヴァンは、検索ページを青色に変更すれば、広告のクリック率が上がると予想しました。
ディヴァンが、青色を選択した根拠には、説得力がありました。
見た目にも好感の持てる色であり、消費者心理にものっとった選択であり、そもそも彼はこれまで数々の実績を残してきたトップデザイナーでした。
しかし、本当に彼が正しいのか、Googleはどうやって確認すれば良いのでしょうか?
Googleは、まずディヴァンが選んだ色より僅かに緑掛かった青を用意しました。
そして、ユーザーがGoogleの検索ページを開くと、ランダムにディヴァンの用意した青若しくは、上記の緑掛かった青のページに誘導するように設定し、その後の行動をモニタリングしました。
結果は、明白でした。
緑掛かった青のページの方が、広告のクリック率が高かったのです。
この件について、経営判断の際にありがちな混乱や言い争いは、一切ありませんでした。
Googleがやったのは、適切な方法で、ランダムに比較対象実験(RCT)を実施した事だけでした。
その結果、ディヴァンの色が負けたからといって、彼のデザイナーとしての能力に問題があるわけではありません。
ディヴァンにとって、今回はコインの裏が出ただけです。
このような検証方法を、ランダム比較実験(RCT)と呼びます。
効果があると予想する考えを持つグループと、それに反する2つのグループに分け、その結果を見るという方法です。
この方法は、誰の感情も経験も思い込みも入る事はなく、客観的により効果がある方を導き出してくれます。
2022年8月、岸田首相がアフリカに対する支援を、3年間で4兆1,000億円する旨の発表をしました。
日本が貧困大国になっているにも関わらず、岸田首相(日本)が世界からATMとして上手く利用されているだけにしか見えないのは、私だけでしょうか?
確かに「世界で最も貧しい人々の暮らしを改善する事」という正論に異論の余地はなく、1日25,000人の子ども達が予防可能な疾病で命を落としている事を考えれば、その支援は急務であると思われます。
しかし、その支援の成果を評価する事が出来ているでしょうか?
ここで、必要になるのがRCTです。
①教科書の無料配布
②視覚教材(地図や歴史年表・数学の図表等)の無料配布
③駆薬の配布
上記の3点において、学力向上に寄与しているかどうかを検証する為、RCTを行いました。
①教科書の無料配布であれば、教科書を無料配布するグループ(介入群)と、教科書を無料配布しないグループ(対象群)に分け、テストの成績を比較したのです。
直感的に教科書を無料配布されたグループの方が、テストの成績は良いと思いますが、結果は直感とは異なりました。
教科書を無料配布されたグループも、教科書を無料配布されなかったグループも、テストの結果に違いは認められなかったのです。
②視覚教材の無料配布も、同様の結果でした。
唯一、効果があったのは③駆薬剤の配布でした。
③駆薬剤の配布により、子ども達の身長が伸び、感染率が下がり、学校の欠席率が25%も下がったのです。
子ども達は、虫による感染症により病気となり、学校に出席する事が出来ていなかった事が、根本的な問題であった事が、RCTにより導き出す事が出来ました。
世界のトップ企業や、世界のトップのスポーツクラブは、RCTを用いて、会社やチームの方向性を導き出しています。
何か良いアイデアを思いついた時、そのアイデアに反する対照群を作る事をお勧めします。
人には「正常性バイアス」が働く為、良いアイデアを思い付いたら、そのアイデアを支持する情報ばかり集めてしまいます。
それでは、適切なデータを収集する事は出来ません。
その考え方の癖をつける事で、あなたの言動が、より説得力のあるものに変わる事を約束します。