「彼女がいなければ‥私はとっくに壊れていたかもしれない。乱暴な妹ですがー根は優しい怪異。私を‥護るために生まれてきたんです。」
「虎ちゃんもそうなのかい?」
「苛虎はー違います。私が妬む対象の排除が目的の‥攻撃特価型のー怪異。今はギリギリの瀬戸際で食い止めていますが、もう長くは保ちません。いずれ外に出て嫉妬の対象を悉く焼き尽くすでしょう。」
「はっはー一つ、質問させてもらってもいいかい?じゃあ君は虎の存在に気づいていながら、1カ月も放置してきたわけだ。邪魔者がなぜかいなくなるーのを期待していたんじゃないのかい?」
‥今までのー私ならば。そういった類の感情をせっせと心から外に吐き出してー掃き出して、きた。それが私の知らぬところで、怪異に育っているとは夢にも思わず、知ろうともせず。私は白くあり続けるためにー自分の心をゴミのように捨ててきた。私を誰よりも虐待してきたのはー私だった。‥
『化物語』羽川翼と忍野メメの会話と、羽川翼の脳内言葉です。
仏教には「心の反応は連鎖する」という考えがあります。
たとえば、仕事で嫌な事があったとします。
その怒りのせいで、自宅に帰り、小さな事で家族にあたってしまう等という事は、誰もが経験した事があるのではないでしょうか。
或いは、過去に辛い挫折を経験し、その時の燻っていた怒りに、ふとした弾みに火がついて、怒鳴り散らしてしまった‥。
また、学校でいじめにあった事がきっかけで、その時の記憶が尾を引いて、今も人前に出ると恐怖が蘇る等‥。
このような現在もあなたの心を支配する過去の怒り、挫折、記憶等を結成した反応と呼びます。
過去関わりを持った女性は「母親の言う事を聞かなければならない」という幼少期を過ごしてきました。
この女性の言動には、いつもこの過去が影を潜めているように、私には映りました。
自分でも知らず知らずのうちに溜め込んだ怒りは、ふとした瞬間に爆発しそうになったり、実際に爆発してしまいます。
日常生活のちょっとした刺激でさえ、幼少期から溜め込んだ怒りにより「うっとうしい」「邪魔だ」「消えろ」等という思いを作り出してしまっていました。
この結成した反応は、新しい刺激に触れて作動する地雷のようなものです。
「怒りっぽい」「落ち込みやすい」「常に不安である」等という気質の奥には、結成した反応がある事が多いです。
結成した反応の存在に気付く事が、まず必要な事です。
結成した反応が問題の根幹にある人に対し、カウンセリングや服薬等のアプローチをしても、それだけでは解決しない事が多いです。
それよりも、自身の問題の根幹に結成した反応がある事を知る事、そして、心にはその状態になるまでのプロセスがある事を理解し、心の反応の背後にある別の反応に目を向ける事が大切です。
たとえば、結成した反応による怒りが出現したら「過去の怒りがまだ残っているんだな」と自覚する事です。
心に残っている過去の反応を自覚すると、徐々にその反応の影響を受けなくなっていきます。
「はっはー君は本当になんでも知ってるぇ。」
「なんでもは知りません。知らないことに対しての私は、むしろ赤子のようです。本音を言えばー私は苛虎を退治したくありません。」
‥ーだからー私は自分の心に謝りたい。私を苛め続けて‥ごめんねって。ずっと閉じ込めててーごめんねって。さてーというわけで、ようやく私は私の物語の最初の最初の1行目を書く準備が整った。‥
再び『化物語』忍野メメと羽川翼の会話と、羽川翼の脳内言葉です。