「非術師は嫌いかい?夏油君。」
「分からないんです。呪術は、非術師を守るためにあると考えていました。でも最近、私の中で非術師の‥価値のようなものが揺らいでいます。弱者故の尊さ。弱者故の醜さ。その分別と受容ができなくなってしまっている。非術師を見下す自分、それを否定する自分。術師というマラソンゲーム。その果ての映像(ビジョン)があまりに曖昧で、何が本音か分からない。」
「どちらも、本音じゃないよ。まだ、その段階じゃない。非術師を見下す君。それを否定する君。これらはただの思考された可能性だ。どちらを本音にするのかは、君がこれから選択するんだよ。」
『呪術廻戦』九十九と夏油の会話です。
最近、私もケアマネジャーや相談支援専門員としての価値のようなものが揺らいでいます。
直接的な言葉で表現するのであれば、私達の仕事は、課題や問題を避け続けてきて何も行動をしなかった人や家族の人生の、残務処理をするような一面があります。
仕事が出来る健康状態にも関わらず、何十年も生活保護を受け続けている人。
相手を責めるような言動と出来ない理由ばかりを言い立てる息子と、その息子を肯定し続ける母親。
明らかに知的障害・精神障害があるにも関わらず、親は子どもの頃からその息子には教育も治療もせず、母親が介護を受ける状態となりすでに60歳を過ぎているその息子が社会に知られる。
親と子どもで話し合いが出来ていない事、若しくは親離れ・子離れが出来ていない事が根本的な原因にも関わらず、それを支援者のせいにする家族。
熱力学という学問で扱われる概念に「エントロピー増大の法則」というものがあります。
エントロピーとは、無秩序な状態の度合いを言います。
エントロピー増大の法則を要約すると、物事は放っておくと乱雑・無秩序・複雑な方向に向かい、自発的に元に戻る事はないという意味です。
たとえば、コーヒーを例に挙げてみます。
①ブラックコーヒー:エントロピー小
②ミルクを入れる :エントロピー中
③ミルクが混ざる :エントロピー大
覆水盆に返らずという言葉通り、コーヒーに入れたミルクはエントロピーが大きい状態にあり、自然にはエントロピーが小さい状態に戻る事はありません。
私は、上記のエントロピー増大の法則に最も該当するのが、家族関係であると思っています。
幼い頃からイメージされた子どものイメージを親は変える事は中々出来ませんし、幼い頃からイメージされた親のイメージを子どもも変える事は中々出来ません。
その為、60歳・80歳の年齢同士の息子・父親でも、いまだに息子が父親に何も言う事が出来ないという現象が生じるのです。
80歳の父親が、いまでに頭脳明晰で、運動をしており、健康問題・経済問題いずれも問題なければ、それでも良いのかもしれません。
しかし、現実はそうもいかぬもの。
父親の言動を100%支持していたら真実は見えないし、今後の生活に関してはある程度、家族が主導権を握り行動しないと、エントロピー増大の法則の通り、徐々に生活は破綻していきます。
…術師というマラソンゲーム。その果てにあるのが、仲間(術師)の屍の山だとしたら?…
…非術師を見下す自分、それを否定する自分、どちらを本音にするのかは、君がこれから選択するんだよ…
…猿は嫌い。それが私の選んだ本音…
『呪術廻戦』夏油の脳内言葉です。