ほんとだったら、一番大事にしてくれるはずのお母さんが、私のことぶったり捨てたりしたから、お母さんにそんなことされる自分って、一体なんだろうって‥自分の価値がわかんないんだよ。人付き合いも、うまくいかない。他人がずっと怖いし、私なんかとは別の世界で生きてるんじゃないかって、そういう思い込みで、大事にしたかった人のこと切り捨てたりしてた

 

 「私ずっと生き辛かったんだよ。叔父さん達は、実の子でもない私を育ててくれて、感謝もしてるけど、ずっと埋められない寂しさがあった。なんで私には、お母さんがいるのに、気にかけてすらもらえないんだろうって。」

 「だから、こうやって会いに来たんでしょ。仲良くしようと思ってるのに、変なこと言わないでよ。」

 

 「今またお母さんの気まぐれで、中途半端に優しくされたって意味ない。昔に戻って、一から私のこと、ちゃんと愛してよ。あの時の私がして欲しかったこと、あの時の私にしてよ。」

 「そんなこと出来るわけないじゃん。何言ってんの?」

 「ほんとだったら、一番大事にしてくれるはずのお母さんが、私のことぶったり捨てたりしたから、お母さんにそんなことされる自分って、一体なんだろうって‥自分の価値がわかんないんだよ。人付き合いも、うまくいかない。他人がずっと怖いし、私なんかとは別の世界に生きてるんじゃないかって、そういう思い込みで、大事にしたかった人のこと切り捨てたりしてた。」

 『明日、私は誰かの彼女』雪と雪の母の会話です。

 

 

 

 

 子どもへの虐待に関する相談対応件数は、右肩上がりになっています。

 1997年には5,232件だったものが、2021年には207,660件にまで増加しています。

 子どもへの虐待は家庭の中で周囲にわからない状態で行われる為、実際に虐待が生じている件数は、上記の数字の数倍、否、数十倍であると思われます。

 

 統計上は、虐待により年間50人前後の子どもが亡くなっています。

 しかし、日本小児学会等の調査によると、実際は統計の10倍にあたる500人前後の子どもが、虐待により亡くなっていると推測されています。

 日本においても、毎日1人以上の子どもが、虐待により亡くなっているのです。

 

 

 現在の日本においては、子どもへの虐待は、以下の4つに分類されています。

  ①身体的虐待

  ②性的虐待

  ③ネグレクト

  ④心理的虐待

 

 

 現代の日本において最も多い虐待が、④心理的虐待です。

 心理的虐待には、言葉による脅しや無視、兄弟姉妹間の差別等も含まれます。

 子どもに対して、その存在や人格を否定するような言動を行う事が、心理的虐待です。

 

 日本では、2004年「児童虐待防止法」が改善され、DV(ドメスティックバイオレンス)の目撃が、心理的虐待に含まれるようになりました。

 たとえば、父親が母親に暴力をふるう所を子どもに見せると、心理的虐待となります。

 DVの目撃が心理的虐待に分類されるようになって以降、虐待の中で、心理的虐待の割合が、急激に増加しています。

 

 2021年には、約12万件の心理的虐待のうち、約7万件がDV・暴力の目撃によるものでした。

 心理的虐待は、本来発見しにくい種類の虐待であり、国際的には虐待全体の数%である事が多いですが、日本においては6割以上が心理的虐待となっています。

 

 

 また、実際の虐待の殆どが、複数の種類にまたがって行われています。

 1種類だけの虐待しか行われていないケースは、全体の2割程度しかありません。

 たとえば「お前なんか産まなければ良かった。」と言い、暴力を振るい、病院に行かせないという親の言動は、①身体的虐待③ネグレクト④心理的虐待の3つの虐待を行っている事になります。

 

 

 

 

 心に問題を抱えている人の多くは、人と長期的な関係を築く事が出来ません。

 周囲の人も、そのような人と関わる事は、心に多大な負担を感じてしまう為、離れていきます。

 

 そして、そのような人(その自分の心を改善したいと感じている人)の話を聴いていくと、問題の根幹には、子ども時代、母親と適切な愛着関係を築く事が出来ていない事にあるという答えに辿り着く事が多いです。

 人は、乳幼児期に母親を安全基地にして、その安全基地があるからこそ、他の人との関係性を構築しようと、探索する事が出来るようになります。

 仮に、探索が上手くいかなかったとしても、安全基地があれば、子どもは、安心して探索が出来るのです。

 このように、安全基地を基軸として、子どもは、自分の心を育て、自分の世界を拡げていきます。

 

 しかし、母親との愛着関係が築けず、安全基地を持つ事が出来ない人は、安心して探索する事が出来ず、非行に走ったり、裏切られる前に裏切るような人を傷つけるだけの人間関係を繰り返すようになってしまいます。

 そして、私が、子どもの虐待において、最も恐ろしいと感じる事は、虐待を受けると虐待しやすい心が出来る事です。

 

 

 

 親が離婚をしていると、その子どもの離婚率は3倍となります。

 これと同じ事が、虐待でも起こります。

 また、安全基地を作る事が出来なかった為、非行に走ると、まだ自分自身の心も経済的にも自立していない中、妊娠や結婚をしてしまうという負の連鎖も生じてしまいます。

 

 

 結婚をして、子どもが出来て、1人前になる。

 このような考え方もあると思いますが、私は、心も経済的にもある程度、自立している人でないと、結婚も、子育ても、するべきではないと考えています。