もっともすぐれた者を、すりきれるまで使うというのは信長の方程式であった。信長は自分自身をもっとも酷使し、ついで秀吉、光秀を酷使した

 

 高校生の頃、明智光秀・黒田官兵衛・石田三成の生涯を司馬さんの小説等を通じて知りました。

 そこで、彼らの生涯に畏敬の念を持ちつつ、自分がトップに立たなければ、いずれはトップの気まぐれにより、自分の人生がグチャグチャにされてしまうという事を考えた記憶があります。

 その頃から、漠然と、将来は自分で会社を経営しようと考えていたような気がしていました。

 

 4月17日放送『鎌倉殿の13人』にて佐藤浩市演じる上総広常が源頼朝の策により、謀殺されました。

 ロスを感じている人も少なくないでしょう。

 広常は、2万人の軍勢を率いており、初期の頼朝軍の中で最も大きな勢力を持つ武将でした。

 その為、頼朝もおおいに助けられたわけですが、最大の味方は最大の敵になる可能性があるという頼朝の判断により、謀殺されてしまいます。

 

 傍若無人な振る舞いであったと伝えられている広常に、佐藤浩市の演技がぴたりとハマり、今季大河の中で一番の当たり役となりました。

 振り返れば、2004年大河の『新選組』においても、佐藤浩市演じた芹沢鴨が広常同様、同士討ちにあい、非業の死を遂げています。

 芹沢・広常ともに、傍若無人な振る舞いをする一方、どこかチャーミングな一面もあり、男としての魅力に溢れたキャラクターでした。

 その魅力を作り上げたのは、佐藤浩市の演技です。

 

 「大河で記憶に残っている役は、誰ですか?」と質問をされたら、私は「新選組の芹沢鴨と山南敬助。」と答えます。

 10年以上前の『僕らの時代』において、香取慎吾が佐藤浩市が大河初撮影に現れた時、開口一番「今、何待ち?」と言った旨のエピソードを話していました。

 人と違う事を言うと直ぐに叩かれる今の時代に、彼のような役者は貴重ではないかと感じます。

 もちろん、他者を傷つけたり、バカにするような言動をする事はいけませんが、彼のその人間性が役にも滲み出ているからこその、芹沢や広常の演技である事は間違いありません。

 

 人の魅力とその人への批判は紙一重であるとともに、表裏一体です。

 とかく日本人は、自分と違う意見を言う人を見るだけで「この人は、自分の事を嫌っている。」と勘違いする人が多いです。

 これからの時代、人と違う事を言える人だけが価値のある人になっていくと私は考えています。

 人と違う人を排除するのではなく、まず、その人の違いを認める所からはじめましょう。

 もちろん、その違いが受け入れられないものであれば、その人から離れればいいだけの話です。

 

 頼朝のような人もいれば、広常のような人もいます。

 どちらが欠けても、鎌倉幕府は成り立たなかった事を考えると、様々な人が世の中には必要であるという事を理解する事が出来ます。