「陽太くん‥?」
「‥‥え?」
「どうしたの‥?」
「買い忘れいろいろあって‥。」
「陽登と桜は?」
「お父さんいるから‥。」
「あ、今日もう帰ってるんだ。」
「今日もしかしてご飯いらなかった?」
「いや食べるよ。連絡いれてなくてごめん。」
…家族‥?お姉さんかな?私、ここはもう帰ったほうがいいんじゃ…
「ヨータ‥」
「じゃあ、友達駅まで送ったら、すぐ帰るから。」
「え?」
「あ、うん‥気をつけて。」
「ヨータ良かったの‥?」
「ん?」
「えーと、あの‥お姉さ‥」「母さん。」
「あの人、俺の母さん。」
「え?」
「血繋がってないけどね。本当の母さん、俺が小学生の時に死んじゃって。」
「‥‥‥え。」
「あ、ごめん。そうなるよね‥。だいぶ経ったし、大丈夫だよ。今はもう‥今の家が普通だし。」

『氷の城壁』陽太母と陽太の会話、小雪の脳内言葉と、小雪と陽太の会話です。
♦身体的・心理的・社会的変化が、怒涛のように襲い掛かる
身体つきや脳の活動が変化する事に加え、思春期には、子ども達を取り巻く環境も大きく変化します。
小学校→中学校→高校
生活環境が、大きく変わるのです。
子どもにとって、一際変化が大きいとされているのが、小学校から中学校への進学です。
小学校では、担任の教師がアットホームな雰囲気で生徒達をサポートしてくれる事が多いです。
これが、中学生になると、突然「自立」が求められるようになります。
教科ごとに担当の教師が変わり、勉強も急に難しくなります。
部活を中心として、先輩後輩の上下関係に沿った対応も求められます。
私自身もこのような変化に驚いた記憶があります。
このような急激な環境の変化は「中一ギャップ」と呼ばれています。

これらも原因の1つとなり、中学校になると不登校の数が、急激に増えます。
第二次性徴による身体つきや脳の変化に加え、進学による環境がガラリと変わり、周囲から求められる言動・態度等も大きく変化をする。
身体的・心理的・社会的変化が、怒涛のように押し寄せる思春期は、子ども達にとって、非常に大変な時期なのです。
…普通って言ってたけど、帰ろうと思ったらすぐ帰れるのに、いつもいたのは‥考え過ぎ?でも‥「もしかして」と思えば思うほど、今までに聞いた言葉が、繋がってきてしまう…
…全部私の勝手な想像でしかない。けど、もし当たっていたとして‥それは私(他人)が介入していいこと?…
…本人が大丈夫だと言っていることに対して、勝手に心配してズカズカと踏み込んでもいいもの?しかも、こんなデリケートな‥考え過ぎだといいんだけど…
『氷の城壁』小雪の脳内言葉です。
♦思春期の反抗期は、親からの心理的な自立
思春期の子どもと聞くと「反抗期」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
最初の反抗期は、3歳頃に現れる第1次反抗期である為、思春期、主に中学生の時期に現れる反抗期は第2次反抗期と呼ばれています。
★親からの呼びかけを無視する
☆言葉遣いが荒くなる
★口答えをする
親からすると、苛立つ事は理解出来ますが、反抗期には心理的に重要な意味があります。
思春期の反抗期は、親離れの1つの過程なのです。
思春期までの親子関係は、大人=保護者、子ども=被保護者という縦の関係です。
反抗期は、その関係を、大人と大人という横の関係に変えていく過程なのです。
思春期に子どもが親から心理的に自立しようとする事を、心理学においては「心理的離乳」と表現しています。
心理学者のホリングワースが、1928年に提唱した言葉です。
「ただいま~。」
「あっ陽太くん!ごめんね私、話しかけるべきじゃなかったよね!?」
「え。」
「友達いる時に家族に話しかけられるのとか普通嫌だよね‥。」
「いや‥。」
「空気読めなくて、ごめんね。」
「全然大丈夫‥。」
「夕飯すぐ食べる?それとも一旦部屋行く?」
「あ、もう食べる‥。」
「了解。」
「父さんもう限界‥。」
「あ、お兄ちゃん!」
「ただいま。」
「おかえり陽太‥。助けて。」
「こら陽太~父さん腰悪いから。」
「あーなんではるとばっかりずるいー!!」
「はいはい。」
「陽登!桜!お兄ちゃんまだ、ご飯食べてないから!やめなさい!!」
「これと、これと、はいどうぞ。どのくらい食べれる?お皿いっぱい盛って大丈夫?あっ汁ものもいる?あ~これチンしなきゃ。」
「あ、自分でするよ。」
「いーの、座ってて。陽太くんは、何もしなくていいから。」
…そんなに、気をつかわなくていいんだけどな…
「ゆうえんちしてー。」
「ご飯食べるまで待って。」
「いまー!!」「ギャーッ」
…寝る直前、頭の中で、その日聞いた音、子供達の高い声が、グルグルと回る…
…音を消さないと、眠るために、呑み込まれないように…
…何も考えるな…

『氷の城壁』陽太家のやり取りと、陽太の脳内言葉です。
心理学者ジェフリー・ホフマンは、思春期における親からの自立には①機能的自立②態度的自立③感情的自立④葛藤的自立の4つの側面があると、主張しました。
この続きは、また後程。