アクセルとブレーキ

 興奮やパニック、ストレスが生じる仕組みを生理学的に表現すると、脳の中の偏桃体が危険を知らせ、コルチゾールというホルモンの量が上昇し、再び偏桃体が興奮する。このようなシステムになっています。つまり、ストレスがストレスを呼ぶような構造になっています。

 これには、納得出来る部分があります。怒りやすい人が、その傾向を改善することはなく、久しぶりに会うと、まずます怒りっぽくなっていることも、これで頷けます。

 偏桃体の興奮が収まらないと、パニック状態に陥ります。パニック状態は、辛いだけではなく、理性を失ったかのような言動に陥り、これにより良い結果が生じることはありません。

 私達の祖先が、アフリカの草原で猛獣に出くわした時、パニック発作を起こしたら生き延びることは困難です。そのような状況では、むしろ冷静で明瞭な思考が、生存の可能性を高くしてくれます。

 その為に、人の身体は、またしても、魔法を仕掛けました。ストレス反応を緩和して、興奮やパニックを防ぐブレーキのような機能を設けたのです。

 その1つが海馬です。海馬は記憶の中枢と思われがちですが、感情を暴走させないブレーキとしての機能も持ちます。

 海馬がストレス反応を抑制することで、ストレス反応を引き起こす偏桃体の働きを相殺しています。

 たしかに、頭の良さと怒りという感情は、反比例しています。頭の良い人は、怒りを覚えても、それをそのまま感情として表現することはしません。合理的に考えれば、感情のまま、怒りをぶつけても、自らにプラスになることはないと冷静に判断出来るからです。その逆は、説明するまでもなく、然りです。

 偏桃体がアクセルを、海馬がブレーキを、それぞれの役割を担い、お互いを補完しながら、私達の平穏な精神状態を構築しています。

 このように考えると、感情のまま怒りを表現することは、人の進化に反する行為であることが理解出来ます。

 そして、偏桃体と海馬の働きをスムーズにする為に、最も効果的な方法が運動です。