アーニャがね、よく言うんですよ。危ない目に遭っても、ははが助けてくれるから大丈夫だって。あの子が笑顔ではしゃいでいられるのは、ヨルさんが安全基地になってくれてるから5

 

 「これは持論だけどね、愛ほど歪んだ呪いはないよ。」

 『呪術廻戦』五条悟の言葉です。

 

 

 精神的な親密さと、絡み合った関係は、一見似ていますが、全く異なるものです。

 精神的に親密な関係の場合、自分というものをしっかり持った2人が、互いを深く知り合う事に喜びを見出します。

 そして、互いを知っていく中で、互いの違いを認め合い、尊重し合います。

 

 これに対し、絡み合った関係では、精神的に未熟な2人が、互いに強烈に依存し合いながら、自分のアイデンティティを求めます。

 この絡み合った関係の中で、彼ら彼女らは、確実で予測出来る安全な感覚を生み出していきます。

 その感覚とは、互いが相手にとって都合の良い役割を演じるという、偽りの安心を感じられる互いに依存したものです。

 たとえば、8050問題に代表されるように、80代の親が50代で仕事をしないで家に引きこもる子どもを経済的に支える等の関係性が挙げられます。

 8050問題に日々直面している私からすると、すでに、8050問題ではなく、90代の親が60代の子どもを経済的に支える9060問題になっています。

 

 

 絡み合った関係は、依怙贔屓となって現れる事があります。

 親が他の兄弟姉妹を依怙贔屓する姿を目のあたりにするのは、子どもにとっては辛い事です。

 あからさまな依怙贔屓は、親子の親密な関係の証ではなく、絡み合った関係を現しているに過ぎません。

 

 依怙贔屓される兄弟姉妹は、精神レベルが親と似ている事が多いです。

 精神的に成熟していない人達は、互いに絡み合った関係に引き込み合います。

 親子の場合は、この傾向が特に顕著です。

 

 精神的に未熟な親が求めるのは、個人の気持ちではなく、役割です。

 依怙贔屓されなかったのは、あなたに問題があるわけではありません。

 これは持論ですが、精神的に成熟しているのであれば、親がいる実家や子どもの頃から育った地域から、飛び出したいという思いを抱き、その思いを人生のどこかのタイミングで実行するものであるという世界観を私は持っています。

 精神的に成熟している兄弟姉妹は、実家を飛び出し、自分で仕事を見つめ、自分でパートナーを見つけ、自分が選択した街で自分の人生を生きていきます。

 精神的に成熟していない兄弟姉妹は、実家に残り、仕事をせず、パートナーも見つけられず、家賃を払う事もなく、生活を続ける中で親との絡み合った関係を続けていきます。

 その為、親と同居をしているにも関わらず介護等の手続きをするのは実家から離れた兄弟姉妹であったり、実家から離れた兄弟姉妹が狭く固定化された価値観に疑問を投げかけると絡み合った関係を築いている親とその兄弟姉妹は感情的になります。

 

 絡み合った関係に引き込みたいという思いを親に抱かせない精神的に成熟した子どもは、実際に親元を離れて、物理的にも、経済的にも自立し、自分で決めた人生を歩むのです。

 それでも、親が他の兄弟姉妹との絡み合った関係にエネルギーを注いでいる為、その関係に巻き込まれなかった兄弟姉妹は「親に見捨てられた」という思いを抱いたまま、苦しみます。

 

 

 絡み合った関係は、①依存型②理想型の2種類に分類出来ます。

 ①依存型の場合、子どもは自分で人生を生きていくとう環境に適応出来ず、親は救助者か被害者となります。

 ②理想型の場合、親は、お気に入りの子どもが他の子どもよりも大事で価値があると言わんばかりに、その子を甘やかします。

 ただし②理想型の場合、お気に入りの子どもを鉄壁の役割に押し込める事になり、その子どもも、本当の精神的な親密さを経験出来なくなります。

 

 パートナーとの関係、親子関係、兄弟関係等。

 愛ほど歪んだ呪いはないという事を念頭に置き、精神的な親密さをお互いに成長させていきたいものです。

 私は、その為には、10代・20代で実家を飛び出し、様々な壁にぶつかり、自分の人生を自分の行動で作っていくという過程を経る必要があると考えています。