エチオピアの聖域

 マサイマラ国立公園をサファリしている時、草原の中にヒヒがいました。

 ヒヒの種類が何だったのか記憶していませんが、ヒヒを始めとするサルは、森の中で暮らしているとばかり考えていた為、驚いたことを記憶しています。

 ゲラダヒヒは、エチオピアの高地にて生息をしているサルの中で唯一草を主食とする種です。

 私は、少数民族が多く暮らしているエチオピアにも行きたいと感じていましたが、そのような人達が生活の為に守ってきた自然が、ゲラダヒヒにとって聖域となっていました。

 ゲラダヒヒは、平和の象徴とも言えるような温厚な性格をしています。

 群れ同士が出会っても、争うことはなく、特定の力のあるオスが食べ物を独占することもありません。

 唯一、ゲラダヒヒのオスが戦う姿勢をみせるのは、若いオスの群れが、自身の群れに威嚇をしてきた時です。

 この時も戦いで勝敗を決するのではなく、若いオスの群れから上手く逃げることで勝敗が決します。上手く逃げることが出来れば、そちらの勝ちです。戦わずして勝つ、家康を思い出させるかのような戦い方です。

 そのようなゲラダヒヒ属のサルは、世界中に分布し、発展していきました。

 現在のゴリラ程の大きさの種も、生存していたことが発見されています。

 しかし、地球の大規模な地殻変動等により、ゲラダヒヒの種は次々と絶滅をしていきます。

 そのように密林がなくなる環境で、ゲラダヒヒは草原の中、草を食べることで生き残りました。

 エチオピアウルフやアイベックス等の独自の進化を遂げた種類も、地殻変動や氷河期等を生き残り、ゲラダヒヒ同様、エチオピアの高地において、現在も生息しています。

 ただ、エチオピアウルフは500頭、アイベックスは800頭程しか生息しておらず、絶滅の危機に生じています。

 ゲラダヒヒが世界中に分布した時と同時期、ホモサピエンスの祖先であるホモエレクトスも、世界中に分布を始めました。

 その時期に、ホモエレクトスが、ゲラダヒヒを食べていたことが確認されています。

 その時同様、ゲラダヒヒもやエチオピアウルフ、アイベックス等が生息するエチオピアの高原である聖域を侵略しているのも、ホモサピエンス、人です。

 人が進める開発により、何十万年も生息してきた聖域が侵されています。

 小学校2年生位まで私は動物番組が大好きでした。

 その時動物番組を観ながら、絶滅の危機にある動物を救いたいという思いを持っていました。

 コロナウイルスにより、ヨーロッパのフットボールチームや銀座、新宿等をはじめとする夜の街等、実態以上の桁のお金が動いてきた業界が大打撃を被っています。

 バブル崩壊やリーマンショック等も、人が信じてきたものが実態以上の価値があることに気づかれた時に生じ、崩壊をしています。

 実態以上の価値を持たせることで、競争が生まれ、より良いパフォーマンスが期待出来る等、良い面もあります。

 しかし、その実態以上の価値を見直すことも必要であることを、今回のコロナウイルスが教えてくれているように感じます。