カムイホプニレ3

 

 「アシㇼパという名は、父がつけた。新年という意味だが、未来とも解釈できる。わたしは、新しい時代のアイヌの女なんだ。」

 『ゴールデンカムイ』アシㇼパさんの言葉です。

 

 

 アイヌの人達は、世界を理解するのに、あらゆるものを擬人化してきました。

 『ゴールデンカムイ』のタイトルにもなっているカムイとは、アイヌの世界では神に近い意味を持つ言葉です。

 しかし、私達が想像する神とは少々異なり、アイヌの人達にとっては、クマも、イヌも、炎までも、カムイなのです。

 

 カムイは、私達の目からみると、クマやイヌや炎に見えますが、それらは彼ら彼女らが人間の目に見えるようにまとっている衣装であると考えられています。

 カムイ達は、本来カムイアシモリというカムイの世界におり、そこでは人間の姿をして暮らしています。

 つまり、クマもイヌも炎も、皆ヒトの姿をしており、食事もし、仕事をし、結婚をしていると考えられています。

 

 ただし、それは霊魂の状態である為、ヒトの目から見る事は出来ません。

 彼ら彼女らが、ヒトと関わりを持つ為にアイヌアシモリ(人間の世界)にやってくる時には、ヒトの目に見えるように衣装を身に着けてきます。

 炎のカムイであれば、6枚の赤い着物を帯で結び、さらに6枚の赤い着物を上に羽織って、ヒトの世界にやってきます。

 私達の目に見える炎は、12枚の赤い着物であると考えられています。

 

 

 「私たちは、身の回りの役に立つもの、力の及ばないもの、すべてをカムイ(神)として敬い、感謝の儀礼を通して、良い関係を保ってきた。火や水や大地、樹木や動物や自然現象、服や食器などの道具にも、全てカムイがいて、神の国からアイヌの世界に役に立つため送られてきたと考えられ、粗末に扱ったり、役目を終えたあとの祈りを怠れば、災いをもたらすとされてきた。」

 「狩猟を生業としている私達にとって、動物のカムイは重要な神様。動物たちは、神の国では人間の姿をしていて、私たちの世界へは、動物の皮と肉体を持って遊びにきている。」

 再び『ゴールデンカムイ』アシㇼパさんの言葉です。

 

 

 彼ら彼女らが身に着けてくるものは、ヒトへのお土産でもあります。

 炎はヒトに光と熱をもたらし、クマは毛皮と肉を、樹木は樹皮や木材をもたらしてくれます。

 それらは、ヒトが自分の手で作り出す事は不可能であり、カムイ達に持ってきて貰わなければ、手に入れる事が出来ません。

 ヒトは、そのお返しとして、カムイに感謝の言葉を述べ、お酒や団子等、ヒトの手を経なければこの世に存在しないものを、カムイに贈り物として捧げます。

 

 いわば、ヒトとカムイは、互いが互いを必要とするパートナーであるという考えが、アイヌの考えの根本にあります。

 

 私は、SDGsの趣向が、どうも好きになれません。

 その理由は、私の目には、人が上・自然が下にあるような関係性に見えるからです。

 そうではなく、アイヌのように、ヒトとカムイがパートナーであるという考えの方が、私には腑に落ちます。

 新年であるアシㇼパに、カムイ的な世界観をお勧めします。