サイドバック進化論

 シティのカンセロに代表されるように、サイドバックにゲームを作る能力が、定着してきました。

 フットボールファンであれば、5年以上前より、それが求められる事は理解していたのではないでしょうか。さらに、カンセロはインテルでも、ユーべでも、現在と同等のパフォーマンスをしていました。ペップという理解ある指導者との出逢いと、それが体現出来るチームに所属出来たという幸運が重なったのが今の姿です。

 Jリーグや高校サッカー等では、サイドバックにボールが渡ると、前に蹴ってしまうことが多いです。そのボールは、ほとんどの場合、相手ボールになってしまいます。その為、日本においては、ゲームを作ることが出来るサイドバックは必要な存在です。

 しかし、ヨーロッパのクラブにおいては、近年中堅やそれ以下のチームであっても、サイドバックからただ蹴るだけというチームはほとんどなく、ボールを繋ぐことが出来ています。

 そうなると、サイドバックに求められるのは、常にゲームを作る能力ではなくなってきます。

 私が、ヨーロッパのサイドバックに求めるのは、ジョーカー的な役割です。

 銀河系軍団時代のマドリーは、試合が膠着した時、その雰囲気を破るのはロべカルの大袈裟な程のフェイントであったことが多々ありました。

 成熟しきったユーロ2012のスペイン代表のカンフル剤となったのは、スペイン代表の中で唯一トップスピードで駆け抜けていたジョルディアルバでした。

 その後、10年間バルサにおいても、均衡を崩すのはメッシとアルバのコンビであることが続いています。

 アタランタにおいても、昨シーズンのカンピオナート再開直後のラツィオ戦、今シーズンのリヴァプール戦、得点を決めたラインは、ハテブールとゴゼンスのサイドバックコンビでした。

 このように、サイドバックにはチームが停滞した時のジョーカー的な役割を私は期待しています。

 それは、もちろん、得点だけではありません。ゲームを作るのに停滞したらゲームを作る。中盤が停滞していたら、自分の立ち位置を変え、ゲームを少し動かす。チームが守備に追われていたら、センターバックを助ける等、目立ちはしませんが、ジョーカー的な役割は多岐に渡り、目立たないからこそ、ジョーカーとして機能します。

 その意味で、アタランタ戦でメンディーが得点を決めたことは、分かりやすくはありますが、ジョーカーとしての役割でした。

 現在、有能なサイドバックが次々に現れています。新たなサイドバック像を、これからを担う選手達に築いてってほしいというのが、フットボールファンの願いです。