ヒソカは、自分以外の誰にも属さない。自分が、最強だと理解しているからだ3

 

 …父は柔道の全日本銀メダリスト。母は走高跳び日本2位。1位になれなかった無念を晴らすために「我が子にはトップアスリートになって欲しい」そんな期待を託されて、僕は生まれた…

 「洋ちゃん、今日の分のタンパク質。あとで炭水化物も摂るんやで。」

 「トレーニング終わったら戦術勉強な。サッカーのトレンドも理解せな。」

 

 …世界的メジャースポーツ。サッカーで一番の選手になるために、僕は毎日英才教育を受けて育った…

 「うぉし、今のええシュートや。この1カ月で精度上がってるで洋。」

 「洋ちゃん、このまま伸びたら、世界一のストライカーになれるで。」

 …ホンマは、友だちともっと遊びたかったけど…

 

 …両親(ふたり)が喜んでくれるから、僕はサッカーをした。僕は、愛されてると思ってた…

 「だから数値が足らんって言うてるやろ!?栄養管理は、お前の仕事なんやから、ちゃんとせぇや!」

 「全部私のせい!?そっちのトレーニングが悪いんやろ!?」

 「はぁ!?このままやったら、プロ入られへんぞ。どーすんねん!?」

 「あーもーやめてよ!?なんのために、アンタと結婚したと思ってんの!?」

 

 『洋が世界一になられへんかったら、離婚や!!』

 …リコン‥?嫌や‥僕って、なんなん?…

 「なぁ‥リコンすんの?僕のせいで‥リコンすんの?」

 

 「お‥おい大丈夫か!?」

 「そんな‥折れてない!?」

 「ひねっただけか!?大事な足やぞ。答えろ洋!?」

 「でも一応、救急車呼ぶから!もう信じられない!!」

 

 「あぁこの人たちは、僕を視てない。この人たちが愛してるのは、僕の才能(スペック)だけで、僕じゃない…

 『ブルーロック』氷織の子ども時代の回想です。

ブルーロック 氷織 (354 無料画像)

 

 

 

 真の「自己肯定感」とは、何かが出来るという「自己効力感」や、誰かの役に立っているという「自己有用感」とは、異なります。

 「自己肯定感」が高いとは、ありのままの自分を無条件で受け入れ、愛している状態の事です。

 

 

  ‥友人にダメ出しをされて、自己肯定感が下がった‥

  ‥上司に褒められて、自己肯定感が上がった‥

 

 このように、他人からの評価で、自己肯定感が上がったり、下がったりしている人が多いです。

 恋人に振られて自殺してしまう、逆に自分を振った恋人を殺してしまう等という極端なニュースも耳にします。

 上記を心理学的に分析すると、恋人に振られた事で、自分が全否定されたと感じ「自己肯定感」が0に近い状態になった事が原因であるという答えを導き出す事が出来ます。

 

 

 何故、私達は、これ程までに、他人の評価を気にしてしまうのでしょうか?

 

 

 私は、その原因の1つに、人が自分1人では何も出来ない状態で生まれてくる事が関係していると推測しています。

 ポルトマンが「生理的早産」と呼んだように、生まれたばかりの赤ちゃんは、呼吸以外、何も自分でする事が出来ません。

 年齢を重ねるにつれ、言語能力を獲得し、食事や排泄等も自分1人で出来るようになっていきます。

 

 

 しかし、子どもは、自分1人でお金を稼ぐ事が出来ません。

 自分でお金を稼ぐ事が出来ない子どもは、親の言う事を聞くしかありません。

 親を怒らせてしまったら、親に嫌われてしまったら、ご飯を食べさせて貰えないかもしれない‥。

 

 

 子どもも、親も、意識していないと思いますが、子どもにとっては、親からの評価は、自分の生死に関わる事なのです。

 さらに、多くの親は、子どもが学校で教師の言う事をよく聞く「おりこうさん」を期待します。

 その為、学校における教師からの評価にも、子ども自身の生き残りが懸かっているのです。

 

 

 

 

 私が「公認心理士」として「カウンセリング」をしていくと、殆どの人の問題の根幹が「幼少期の親との関係性」にあるという答えに辿り着きます。

 

 

 親等の養育者が、赤ちゃんの要求に適切に反応する事により、赤ちゃんは親を見ると笑いかけたり、不安や恐怖を感じると親にくっついたり、姿が見えなくなると泣き出したりします。

 ボウルビィは、このような赤ちゃんと親の相互作用的な関係を「愛着(アタッチメント)」と呼びました。

 「愛着」は、生後6ヵ月頃から、形成されるとされています。

 親が、赤ちゃんの要求を適切に判断する能力は、健全な「愛着形成」の為の重要な要因となります。

 

 

 また、アメリカの心理学者であるエインズワースは、子どもは親との「愛着関係」によって育まれる「安全基地」を拠り所とする事で、外の世界を探索出来るようになると主張しています。

 つまり、乳幼児期に、親と子どもが適切な「愛着関係」を築けていないと、その子どもは大人になっても、他者と長期的な関係を築く事が出来ない人になってしまい可能性が高いです。

 その理由は、どこを探索しても大丈夫という「安全基地」がない為です。

 

 

 エインズワースは、子どもと母親を短時間分離し、再会させた時の反応を見るという「新奇場面方(ストレンジ・シチュエーション法)」を用いて「愛着形成」の分析を行いました。

 その結果、下記の4つのパターンが見つかりました。

 

  ①A型(回避型):母親と再会をしても、そっけない態度で母親を避けようとする

  ②B型(安定型):母親と離れる時は嫌がっても、しばらくすると1人遊びを始め、再会した時は喜ぶ

  ③C型(両価型):母親と再会すると、叩く等の激しい反応を示す

  ④D型(混乱型):母親と再会した事で戸惑う等の混乱した状態を示す

 

 

 

 乳幼児期に、自分とは関係のない親の影響で、築かれなかった、若しくは歪な形で築かれた「愛着形成」「安全基地」を取り戻す事は、困難です。

 何故なら、それを本当の意味で取り戻すには、タイムマシンに乗って、あなたが赤ちゃんの時からやり直さないといけないからです。

 その為、大人になった段階で、仮に親との関係を再構築しても、本当の意味の「愛着形成」「安全基地」を獲得する事は出来ません。

 

 しかし、親の影響で「自己肯定感」が低いままで、幸せな人生を歩む事が出来ないのは、悲しくありませんか?

 また、客観的にみれば‥子どもの頃大変だったのは理解出来るけど、お前もう大人だろ?自分で何とかしろよ‥と思われるのは、当然の事であると思います。

 

 

 他人からの評価への過剰な依存から脱却する為には、幼く無力だった頃に身につけてしまった世界観を書き換える必要があります。

 

 ‥人から評価されないと生きていけない‥

 ‥だから、人から評価して貰う為に行動する‥

 

 このような世界観、その世界観から生じる行動パターンに気付く事が必要です。

 そして、その世界観を書き換えるのです。

 

 ‥大人になった私は、他人から評価されなくても死にはしない‥

 ‥他人に認めて貰う事を、私の行動の動機にする必要はない‥

 

 

 「氷織洋。お前、非凡やな。」

 「お前、天才やな。氷織。持って生まれた身体能力と、研ぎ澄まされたボールタッチ。サッカーIQも抜群やし、左利きのキックセンスがエロすぎる。」

 「エロ‥?」

 

 「でも、最後の最後。ゴール前での執念が凡や。心とカラダがズレてるプレーっちゅうか‥お前、サッカー好きちゃうやろ?」

 「‥はい。凄いですね烏くん。わかる人には、バレるもんやね。」

 「俺ぁ分析屋やからな。今のままやったら、俺に勝たれへんで、お前。」

 

 「‥そっか。烏くんは、期待されんの好き?」

 「あ?」

 「僕は、ずっと期待されてきた人生やから。それで多分‥サッカーが嫌いになったんやと思う‥。」

 「凡やな。他人の眼なんか、後から考えたらええねん。まずは、自分や。自分に期待しろ。自分のコト、ワクワクさせる。そっからしか、何も始まらへんどボケェ。」

 『ブルーロック』烏と氷織の会話です。

ブルーロック – Raw 【第206話】