…高校最後の公式戦。拮抗した試合展開の中、1人ドリブルで抜け出した男がいた…
…敵陣のゴール前で2対1の局面。すぐ隣の味方にパスを出せば、確実に得点が出来る…
…しかし、その男は、パスを選択せず、ドリブルで相手を抜く選択をする。その結果、相手に倒され、得点機を逃す…
…監督からは「何で出さないんだ」と怒号が飛ぶ。これに対し、その男は「うるせぇ」と叫んだ…
三苫薫の物語です。

『ブルーロック』1話と同じシチュエーション。
隣の味方にパスを出せば、確実に1点が取れる状況(シチュエーション)
国民の期待・仲間の期待・指導者の期待・家族の期待等、そんなものとは関係なく、自分のエゴを優先する事が出来る選手のみが、高みへと行く事が出来る世界観。
★世界一のストライカーであれば、自らのエゴの為、迷いなくシュートを打つ
☆世界一のドリブラーであれば、自らのエゴの為、迷いなく仕掛ける
上記が『ブルーロック』の世界観です。
下記が三苫薫の世界観です。
世界最高峰のリーグ、プレミアリーグに三苫薫の衝撃を与えたのは、2年前。
私は、日本人で、相手を抜き去り、得点を決める事が出来る選手の出現に、驚きました。
昨シーズンも、シーズン序盤こそは同様の働きをしていましたが、シーズン中盤以降は、怪我により、出場する事も出来ませんでした。
そして、勝負の3年目。
現段階における三苫の、ゴール期待値は、0,12。
2年前の0,27と比較し、その数値は、半分以下にまでなっています。
サッカーにおいても、仕事においても、家族関係においても、最も困難な事は、結果を出し続ける事です。
1シーズンだけ輝きを放つ事が出来る選手は、思いの他、多数存在します。
しかし、その輝きを、2シーズン、3シーズン、4シーズンと継続する事が出来る選手は、希少になります。
これは、サッカーに限らず、仕事でも、家族関係においても、同様ではないでしょうか?
勿論、得点をする事だけが、サッカーの全てではありません。
否、私は、得点よりも、90分間に、どれだけチームに貢献出来たか、否、試合の駆け引きで味方が優勢になる複数の手札を出し続けられるかを観ており、そういう選手が好きです。
サッカーを観る時に、その選手が、サッカーを深く考えてプレイしているのかを観る時に、1つお勧めの観方があります。
それは、その選手が、クリアをした時のボールの行方を追う事です。
どんなチームでも、どんな選手でも、クリアをせざるを得ない状況になる事があります。
高校サッカー・Jリーグを中心として、そのクリアは、相手陣地の深い所にすればいいという事が、日本人には染みついています。
しかし、それは間違った世界観です。
正しいクリアとは、そのクリアの後、自分達にもう1回ボールが返ってくるようなクリアです。
端的に表現をすれば、クリアを受けた相手が、もう1度クリアをしなければいけないようなクリアの事です。
さらに細かく指摘すると、相手の利き足ではない方へのクリアであり、味方選手がプレスに行き相手にプレッシャーを掛けられる程度であり、さらに味方が一呼吸出来るようなクリアの事です。
上記のクリアの世界観は、クリア以外にも、応用する事が出来ます。
クロスを上げる時、味方に合わせる事が困難であると判断をしたら、相手が大きくクリアする事が出来ず、かつ、敵味方がぶつかるような場所にクロスを上げます。
そうする事で、クロスが直接得点に繋がる事はなくても、そのクロスがこぼれた先に、得点が出来る可能性が、高まります。
極端な話、その場所にクロスを上げる事が出来れば、ゴール前に味方が1人で相手が4人等の場合でも、得点の可能性を持つ事は出来るのです。
私は、すぐにクロスを上げる選手は、好きではありませんが、上記の様なクロスを意図的に上げる選手は、好きです。
今シーズンの三苫は、このようなクロスを上げる事により、チームに貢献をしています。
ただ、これは私の持論ですが、そのクロスは、常に2番目・3番目の選択肢にしておくべきです。
いつでも相手を抜き去る事が出来る選手が、上記のようなクロスを上げるからこそ、相手は打ちのめされるのです。
クロスが先で、抜き去る事が次では、決してありません。
今シーズンの三苫は、タイミングが合った時にしか、相手を抜き去る事が出来ていません。
タイミングは、サッカーにおいて、非常に大切な要素ですが、世界一のエゴイストであるドリブラーには、味方や相手・試合の流れが作るタイミング等は、関係ありません。
他者が作るタイミングではなく、常に、主導権は自分にあり、タイミングがなくても自分で作り出すのです。
サッカー好きにとっては、派手ではないけれど、チームに確実に貢献をしている今シーズンの三苫も悪くはありません。
しかし、三苫には、そのような枠に、収まってほしくありません。
「うるせぇ」と叫んだ少年を、私は、応援しています。
再び、三苫薫の衝撃を、待っています。