「逃げた事を卑下しないで、それをプラスに変えてこそ、逃げた甲斐があるというものです。」
『銀の匙』校長の言葉です。
日本には、失敗を許さない空気があります。
否、返しきれない借金を抱えたり、障害者になったり、会社を辞めたりした時等、自分ではどうする事も出来ない状況の時には、自己破産や生活保護、障害者総合支援法、雇用保険等、社会復帰する事が出来るような制度が整えられています。
しかし、そのようなケースは稀であり、多くの人が経験するテストや受験、就活等においては失敗が許されない空気があります。
テストで失敗して良い点数が取れなければ、どのような独創的な意見を持っていても、良い成績を取る事は困難になります。
受験で失敗して一流大学に入る事が出来なければ、大企業に就職する事は困難になります。
就活で失敗して大企業に就職する事が出来なければ、会社に勤めながら多くのお金を稼ぐ事は困難になります。
サッカーにおいても同様で、現在の日本の育成システムでは、1度地域の選抜やユースの試験等に落ちると、その先に進む扉は閉ざされ、プロになるという道も開く事が出来ません。
そして、その選抜やユースの選手を選考する指導者が、サッカーに通じているかというと殆どの場合、そうではありません。
このような失敗したら次がない環境の中でプレイをする選手はどのような選手になってくでしょうか?
選手は、成長するとともに、指導者の顔色を伺いながらプレイをするようになります。
そのような選手ばかりが集まったJリーグや日本代表が魅力的なチームになる事が出来ない事は、想像に難くありません。
「価値観の違うものが混ざれば、群れは進化する。」
『銀の匙』富士先生の言葉です。
ドイツの研究者ラインベルクは、教師のマインドセットの影響が生徒にどう現れるかを研究しました。
教師には、クラスがスタートした当初の学力差がずっと続くと信じている硬直マインドセットを持つ人がいます。私の印象では、9割程度の教師はこのような傾向が強いと感じています。
このような硬直マインドセットを持つ教師により指導された生徒の成績は、1年後どのようになったでしょうか?
学年当初に成績が良かった生徒は学年末にも成績が良く、学年当初に成績が悪かった生徒は学年末にも成績が悪いという結果が出ました。
これに対し、どのような生徒でも学力を伸ばす事が出来るという考えを持つ柔軟マインドセットを持つ教師に指導された生徒の成績はどうだったでしょうか?
柔軟マインドセットを持つ教師により指導された生徒は、学年当初の成績に関係なく、学年末に成績が良くなる生徒がほとんどだったのです。
このように大人のマインドにより、子どもの才能が開花される可能性が高くなります。
もちろん、大人のマインドにより、プロのサッカー選手になったり、東大に入る事は難しいです。
しかし、試合に出て活躍をしたり、地域の進学校に進学したりする事は出来ます。
極端は例ではなく、多くの人達が日々繰り返す勉強や仕事、人生の中に失敗を許すマインドセットを持つ事が、日本を成長させる為には必要であると考えます。