不思議な赤い実

 トウガラシは、不思議な果実です。  植物の果実が赤くなるのは、動物や鳥を呼び寄せ、果実を食べさせ、動物や鳥に種子を運んでもらう為です。  そのため、未熟な果実は、緑色で苦い味がするのに対し、熟した果実は赤色で甘いのです。  ところが、トウガラシは、赤色をしているにも関わらず、甘くありません。  それどころか、食べられることを拒んでいるかのように、辛いです。  「赤い果実は、甘い。」これが自然界で、植物と動物や鳥が交わした約束です。  トウガラシは、何万年もの間、築かれてきた約束を破っています。  トウガラシも、他の果実同様、未熟なうちは、緑色をしており、熟すと赤くなります。  つまり、トウガラシも「食べてほしい。」というサインを出しています。  ただし、トウガラシは食べてもらう相手を限定しています。  サルのような哺乳類は、辛いトウガラシを食べることができません。  しかし、鳥は、トウガラシを平気で食べることができます。  鳥には、トウガラシの辛味成分であるカプサイシンを感じる受容体がありません。  鳥にとっては、トウガラシも、イチゴやトマト同様、甘い果実のように感じているのでしょう。  トウガラシは、種子を運んでもらう相手を鳥に限定しました。  鳥は、大空を飛び回る為、動物と比較し、移動距離が長く、より遠くまで種子を運んでくれます。  また、鳥は果実を丸飲みする為、種子は消化されずに、無事に体内を通り抜けることができます。  そのため、トウガラシは動物に対しては拒否反応を感じさせる、実に見事な防御物質を身に付けました。  植物界の変わり者であるトウガラシから、生き残る術を学ぶことができます。