「感情的になってますね兄上。」
「盤古の事ですか?」
「…今回も枯れた。これでまた、百年待たねばならん…。」
「もう…丹にしてしまうのは?」
「無理だ…今のまま丹を強製しても強すぎる。天仙(われわれ)であっても制御できない。絶妙な均衡にある我々の氣(タオ)を狂わせてしまう。どのような影響が起きるかわからない…。繰り返しだ。成功と失敗が延々続く。何百年あっても、終わりがない。咲いては枯れ、また生まれ…また潰えてしまった。」
『地獄楽』天仙の会話です。
昨日、国立科学博物館(かはく)に行ってきました。
ラウンジで昼食を食べていると、流石かはく。壁紙に鉱物が描かれていました。
鉱物は、永い年月をかけて地球から生み出された大地の結晶です。
宝石や美術品として古くから愛され、近代では鉱物から元素が発見される等、人類に不可欠な存在となっています。
絵具もない古代の絵画は、どのように色をつけていたでしょうか?
その答えが、鉱物です。
たとえば、ポンペイ遺跡の壁画の赤色は、辰砂という鉱物を使い描かれています。
辰砂は、不透明な赤褐色の塊や、透明で濃い赤の結晶で見つかる事もある硫化水銀の鉱物です。
日本でも産出され「丹(に)」とも呼ばれ『魏志倭人伝』の邪馬台国の記述にも登場します。
ここで、私は『地獄楽』で描かれている不老不死の薬「丹」と辰砂が繋がりました。
辰砂は、古代中国では、不老不死の薬として使われていました。
辰砂を主原料とする不老不死の薬「丹薬」を作る錬丹術が発展し、20世紀まで盛んに発掘されていました。
現在では、辰砂に含まれる水銀に毒性がある事が分かり、使われ方は変わっていますが、今でも漢方薬に用いられています。
その事も影響してか、辰砂の学名は竜の血です。
かはくの壁紙から『地獄楽』に繋がり、それが古代中国にまで繋がる。
私は、偶然か必然か、これまで蓄えてきた知識が繋がる瞬間が、何よりも喜ばしいものであると感じています。
繋がる為には、本を読むだけでも、様々な場所に出掛けるだけでも、心許ないです。
本を読み、様々な場所に出掛ける事で、繋がると信じ、今日も実行しています。