人は、脳が作り出した物語を生きている

 「人間の定義を云うとほかに何もない。ただ入らざる事を捏造して自ら苦しんでいる者だと云えば、それで充分だ。」

 夏目漱石著『吾輩は猫である』の一文です。

 会話をしていて「この人は、何でこんな風に考えるのだろう?」等と疑問に感じたことがあると思います。

 たとえば、友人と口論になったとします。

 その時「この問題をどう解決するか?」と考える人がいれば「私はこの人に嫌われているのではないか?」と思い悩む人もいます。

 このような思考の差は、脳が作り出す物語の違いにより発生します。

 友人との口論が始まった瞬間、脳が「他者と意見が異なることは普通のことであり、問題解決に向かう前向きなプロセスである。」との物語を生めば、ネガティブな感情に縛られることなく、冷静に対処することが出来ます。

 これに対し「私は駄目な人間だから、また何か悪いことをしてしまったのだろう。」との物語を生めば、ネガティブな感情に縛られ、冷静に対処することが出来なくなります。

 このように、私達の判断には、脳が生み出す物語が強く影響しており、私達の行動を導く法律のような働きをしています。

 これが課題の解決に役立つのであれば問題ないものの、人の行動は、時に歪んだ法律によって動かされてしまうことが多いものです。

 歪んだ法律により動かされると、その結果はネガティブなものになる可能性が高くなります。

 何か問題を起こす人に対し「あの人は、そういう性格だから。」等という言動を頻繁に聞きますが、それは性格というよりは、その人の脳が作り出す物語が歪んだ物語になっていることが原因だったと思われます。