人生は凪の海ではなく、結婚は永遠に愛される保証でも権利でもなく、家族という器は頑丈ではなく、ちょっとしたことでヒビが入り、大事に扱っているつもりが、いつの間にか歪んでいることもある5

 

 「特別な人間になれなくても、誰かの特別にはなれるでしょ。」

 『化物語』戦場ヶ原ひたぎの言葉です。

 

 

 

 「愛」がもたらす狂気の中で、最も重要で、最も不可欠で、最も素晴らしいものは、何だと思いますか?

 それは「理想化」です。

 知っての通り、恋をしている人は、相手を理想化します。

 あなたも、新しいパートナーを理想化する友人の話を聞いて、その友人を、頭がおかしくなったと感じた経験があるのではないでしょうか?

 

 1999年の研究では、幸せな恋愛関係にある人々は、パートナーの長所に関して話す時間が、短所に関して話す時間の、5倍長いという結果が出ています。

 恋愛とは、他者を信仰する人間の宗教なのです。

 

 ここで驚くべき事実を紹介します。

 あなたも、新しいパートナーを理想化する友人と同じように、相手を理想化し、頭をおかしくした方がいいのです。

 パートナーの理想化は、ただ甘いだけではなく、占いよりも確実に、正しく未来を予測する事が出来ます。

 

 

 

 サンドラ・マレーとジョン・ホームズは、121組のカップルと82組の夫婦の結果から、2人の関係における理想化は、恋愛中カップルと夫婦の双方において、より深い満足感・愛情・信頼をもたらすとともに、対立・相反する感情をもたらす可能性を少なくするという結論を導き出しています。

 

 「現実主義」は安心かもしれませんが、恋愛での幸せを予言するのは、お互いが抱く「幻想」です。

 しかも、その幻想は、クレイジーであればある程良いとされています。

 パートナーを最も理想化していた人々は、結婚後の3年間に、関係満足度の低下がみられないという報告もあります。

 

 

 勿論、ただ現実から目を逸らす事を勧めているわけではありません。

 私達は、現実を見つつ、バイアスの掛かった見方をする事が出来るのです。

 

 研究者が、熱愛中のパートナーの欠点に関して質問をすると、彼ら彼女らは、パートナーの悪い面も認識し、伝える事が出来ていました。

 彼ら彼女らは、やみくもに相手を理想化しているわけではありませんでした。

 ただ、相手のネガティブな部分も感情的に割引き、大した事ではないと考えていたのです。

 或いは「隙があるから好きになる」のように、パートナーの欠点すら、彼ら彼女らには「魅力的」に写っていました。

 

 

 このような見方や認識の仕方は、パートナーとの関係の「潤滑油」となります。

 愛する人の欠点に関する反応を、恋煩いの脳が和らげてくれる。

 こうなったら、2人の幸せな未来を予測する事は、占いに行かずとも、可能になります。