「ねぇ阿良々木くんは、吸血鬼を治してもらわないの?忍野さんに。」
「いや、これは僕が自分で選んだんだ。ずっとこのままさ。」
「‥そう。‥私、ね。ずっと考えていたのよ。どうして私の体重は5kgだけー残ったのか。それは、私の価値がそのくらい。せいぜい5kg程度の存在でしかなかったからだと思っていたのよ。でも、違った。そうじゃなかった。逆だったのね。カニは私のー心の重さを全部支えてくれていた。つまり、残った5kg以外の私のほとんどはー心だったのよ。」
「私という存在のほとんどは心だった。残ったものなんて大したものじゃなかっただけ。阿良々木君にとって吸血鬼であるということも、本当は大したことじゃないのかもしれないわね。少なくとも私にとってはそう。」
「その時の気持ちはーもしかしたら僕以外誰にもわからないのかもしれない。僕の価値のほとんどは僕の心がつくっている。そんなこと今まで僕は考えもしなかったことだから。僕は自分が吸血鬼であることを、僕がしでかしたことの責任の結果だと。僕が生き続ける理由のほとんどー僕の存在価値は僕が吸血鬼であることとイコールだと思っていたから。」
「けれども戦場ヶ原ひたぎは、僕が僕としてあり続けることの方が遥かに大きいのだと、そう言ってのけたのだ。僕が吸血鬼であることなど、どうでもいいことなのだと。そう言ってくれたのだ。」
『化物語』戦場ヶ原と阿良々木の言葉です。
人生が困難なのではなく、私達が人生を困難にさせているだけなのかもしれません。
人生は極めてシンプルな事であるという教えを『化物語』らしく回りくどく教えてくれます。