「羽川翼という私の物語を、しかし私は語ることができない。というのも、私にとって私とは、どこまでが私なのかを、まずもって定義できないからだ。ふと伸ばした足の爪先までが自分であるとはとても思えないと記した文豪がいたはずだが、私だったら足を伸ばすまでもない。心そのものが、自分のものであるかどうかが疑わしい。私は私なのか?私とは何なのか?私とは誰なのか?誰とは私で、何が私なのか。」
『化物語』羽川翼の言葉です。
自殺したいと考えた事がある人のうち、60%の人が、自殺に関して相談した事がないと答えています。
約3分の2もの人が、生きるか死ぬかという極めて重大な問題を、1人で悩み続け、誰にも相談出来ないでいる状態が、現代の日本です。
日本には、相談という文化が根付いていません。
人に相談すると、相手に心配をかけてしまうと思い込み、心配をかけたくないという気持ちから、自分1人で抱え込んでしまいます。
たとえば、子どもが学校でイジメにあっても、親にも教師にも、相談をしない事が大半ではないでしょうか。
否、相談をしたとしても、カウンセリングのプロではない教師に相談した所で、何の根拠もない教師の個人的な感想を押し付けられるだけという事がほとんどです。私自身も、そのような経験があります。
アメリカでは、小学校からスクールカウンセラーがいて、全生徒と定期的に面談し、相談のハードルを下げています。
幼い頃から、相談慣れしているので、大人になっても相談が出来ます。
私が提案している国民1人に1人のカウンセラーという取り組みも、目的は相談の解決を図る事ではなく、相談のハードルを下げる事にあります。
嫁姑問題は離婚しない限り、解決しないように思います。
職場の人間関係は、会社を辞めない限り、解決しないように思います。
たしかに、根本的に解決しようと思うのであれば、離婚や会社を辞めない限り、解決しないかもしれません。
しかし、不安や悩みの原因を完全に取り除けなかったとしても、不安や苦しみ、辛さの受け取り方は、考え方を変える事で取り除く事が出来ます。
相談は、問題可決や原因除去だけが目的ではなく、不安やストレスを取り除く事が目的となります。
1.ガス抜き効果
2.不安の減少
3.悩みの整理
4.言語化
5.解決法の発見
6.プロのアドバイス
上記6つが、相談をする事によるメリットです。
1.ガス抜き効果とは、ストレスが発散されたり、気分がスッキリする事を意味します。
2.不安の減少とは、話す事により、脳の中の興奮を司る部位である偏桃体の興奮を抑制する事が出来る事を意味します。
3.悩みの整理とは、筋道立てて話す事で、話が整理される事を意味します。
4.言語化とは、現状・原因等、曖昧だった事が言語化する事で、明確になる事を意味します。
5.解決法の発見とは、話が整理される事で、自分で対処法に気づく事を意味します。
6.プロのアドバイスとは、専門家により解決法が貰える事を意味します。
多くの方は、相談をする時、6.プロのアドバイスのみを期待します。
しかし、あなたの問題を解決する事が出来るのは、あなたしかいません。
相談する事で、変わる事が出来るのは、プロがアドバイスをしたからではなく、あなた自身が相談をするという行動をしていく過程の中で、もたらされるのです。
日本は、人口は減少しているにも関わらず、うつ病等、精神疾患を患う人の数は急激に伸びています。
2010年の厚労省の算出によると、精神疾患や自殺によるGDPの損失は、年間2,7兆円になると算出されています。
経済という面からも、相談のハードルを下げる事が、今後の日本を救う1つの方法になると思われます。