レスター、チェルシーでプレミアリーグを連覇し、2018ワールドカップも制したカンテは、新監督がサッリになることを聞き「サッリのフットボールの中で自分がどのような役割を担うべきかずっと考えていた。」と述べ、実際2018年以降カンテのプレイスタイルは大きく変化していきました。
サッリ就任時には、カンテになぜ守備の役割を担わないのだと批判が相次ぎ、カンテ自身も得意ではないパスやドリブルを求められるフットボールに苦労していました。
監督がランパードに変わっても、カンテのぎこちなさは続き、次第にチェルシーの絶対的な選手ではなくなり、あれだけカンテを賞賛していた各メディアもカンテに触れることもなくなってきました。
2021年1月ランパード電撃解任により、トゥヘルが新監督に就任すると、カンテはベンチを温める試合が続きました。それでも、試合終了後になぜ君を使わなかったのかをカンテに説明するトゥヘルの姿は、あるべき監督の姿であると感じた事を記憶しています。
3月以降、カンテがレベルを上げてきたことが伝わるように、守備でチームに貢献するのはもちろん、攻撃でも必要な場所に必要なタイミングで顔を出し、ドリブルもパスもぎこちなさは残るものの、チェルシーの武器になっていきました。
相手チームは、ジョルジーニョは警戒するものの、カンテをあまり警戒しな為、カンテがフリーでボールを持つことが多いです。
ドリブルもシュートもラストパスもあると複数のカードがある上でパスを出す事と、ただパスを出す事には、雲泥の差があります。
サッリとの出逢いから、3年程経過し、カンテは進化しました。
チャンピオンズリーグ決勝シティ戦、チェルシーの先制点の起点の1人になっていたのもカンテでした。
チェルシーを20年近く観てきた私は、チェルシーには様々な思いがあります。
バルサ好きであった04-05シーズンに当たっては最も憎く怖い相手、07-08シーズン母を亡くしたランパードがPKを決め涙を浮かべた姿に私も涙し、2009年にロンドンを旅行した時に毎日スタンフォードブリッジを訪れた以降は、気づけば毎試合チェルシーの試合を観るようになっていました。
フットボールを長年追いかけると勉強になることの1つが、チームや監督、選手の良い時も悪い時も一緒に経験出来ることです。まるで、人生や仕事を共にしているかのように感じると、フットボールを通じて様々な事を学ぶことが出来ます。
2021年1月チェルシーは、最も偉大なレジェンドであるランパードを解任しました。
会長アブラモヴィッチは「現状においては監督を変えることがベストだと判断した。」と発表し、世界中から批判を受けました。私は、現在でもこの決断に反対ですが、チャンピオンズリーグ優勝という結果を残した事を考えれば、アブラモヴィッチの判断は、正解であったと言えるかもしれません。
リュディガーやアロンソは、ランパード体制の前半戦試合に出場できず放出候補でした。
チアゴシウバもパリにおいて、絶対的な存在ではなく、ベンチを温める試合も珍しくありませんでした。36歳のベテランをチームに呼ぶ事に、疑問の声も複数ありました。
キャプテンのアスピリクエタも、前半戦はベンチを温めることが多く、世代交代の象徴のように捉えられ、リーダーとしての器にも疑問が囁かれていました。
サッリとともに招聘されたジョルジーニョは、サッリボールが結果を出せなくなると批判の的になり、スタンフォードブリッジからもブーイングをされていました。
ジルーもランパードの元、出場機会が得られませんでした。
ヴェルナーもハヴァーツも、最後までチームにフィットは仕切れませんでした。
「人間万事塞翁が馬」
人生における幸不幸は、予測し難いものです。幸福が不幸に、不幸が幸福に、いつ転じるかわかりません。それであれば、安易にその時の幸不幸に一喜一憂するべきではないことを、チェルシーを観ていて感じました。