「ま、何事も最初に評価するのは、勇気がいる。海のものとも山のものともしれない新人を褒めて、結果見る目がないと嗤われるのは誰だって嫌だからな。」
「一流のクリエイターたちの評価に加え、老舗写真雑誌の編集長が太鼓判を押したことで、ようやく世間の連中も安心しておまえを褒められるようになったってことだ」
「評価って、そんな簡単に変わるものなんですか?」
…信じられない気持ちで問うと、変わる、とあっさり言われた…
「仕掛ける側が金を力を注げば、ある程度のスターは作れる。逆に撃ち落とすこともできる。レジェンド級は無理だが、まあそこそこの星なら。」
「‥そうなんですか」
「落ち込むってことは、さてはおまえ自分を天然の天才だと思ってたな?」
…冗談めかした、しかしどきりとする言葉だった。自分でも気づいていなかった無意識の傲慢さ。清居とは別の意味で、野口はいつも平良の芯を抉ってくる…
『儘ならない彼ー美しい彼4』の一説です。
ジュンク堂池袋において、本の売れ筋ランキングで『呪術廻戦』『名探偵コナン』『ブルーロック』を抑え、1位になっていたのが凪良ゆう5年振りのひらきよ物語『儘ならない彼ー美しい彼4』でした。
2度の本屋大賞受賞に輝き、映画化もされている『流浪の月』『汝、星の如く』等の、凪良作品は、本屋で特集を組まれる事も多くなりました。
BL(ボーイズラブ)ではない凪良作品も素敵な言葉が散りばめられ、独特の世界観を提供してくれるものの、やはり最も筆が乗っているのは、BL作品です。
…今でも気持ち悪い攻めが好きです…
…十年前には全く需要が見込めない萌えでしたが、自分が楽しいから書こう、担当さんごめんなさい、という気持ちで生まれた『美しい彼』という物語…
…まさかの続刊を打診していただき、それどころかドラマCD企画までいただき、『憎らしい彼』『悩ましい彼』さらに番外編集『interlude』が出たのが2021年。その同じ冬に映像化となり、その後もコミカライズ化など、十年前には想像もしなかった展開が続きました…
…ここ数年で地上波でのBLドラマがどんどん増えて、以前とは比較できないほど市場が広がり、一般層への認知度もぐんと上がりました…
…ジャンルの劇的すぎる転換期に、現役のBL作家として活動できたことは、とんでもない幸運だと感じています…
『儘ならない彼ー美しい彼4』のあとがきです。
…気持ち悪い攻めが好きです…
お決まりのあとがきを見ると、最早嬉しさよりも、落ち着きを感じてしまいます。
私が、作品の前に、あとがきを見る作品は『JUMP』と『美しい彼』だけです。