「キミたちは、自分の才能に頼り過ぎている。自覚のない才能は、枯れるよ。」
「例えば速く走れる才能があったとしよう。それは誰にも教えられたモノではなく、自然と恵まれた肉体の使い方がもたらすモノだ。そんな人間がもっといい選手になるために重戦車のようなパワーを欲しがったとしよう。それは速く走るための筋肉しか発達していない肉体に、重りとなる鎧を着るような行為だ。結果として走る速度は落ち、ついてしまった筋力によってバランスが崩れ、中途半端な選手になってしまう。」
「自分の才能の仕組み(メカニズム)を理解しないまま能力を求め、闇雲なトレーニングでアンバランスな肉体を手に入れてしまえば、才能は一瞬で枯れるというお話さ。」
「そして、自信を失い、精神(こころ)を乱し、選手生命は終わる。これはどんな才能の世界にもよくある、消えていく天才たちのシナリオだ。仕組み(メカニズム)を理解していない成功体験は、自分を苦しめる呪いに変わる。」
「俺も若い頃そうだった。だが、それはプロとは呼ばない。どの筋肉が自分の才能を創り出して、どんなプレーになるのか。己を理解し、コントロールできてこそプロフェッショナル。」
『ブルーロック』クリス・プリンスの言葉です。
土日に小学校の横を通ると、サッカーや野球等、様々なスポーツ少年団が活動をしています。
そこで、指導者が「もっと強くいけよ。」「それじゃ駄目だよ。」「もっと守ろう。」等、自身の持論を大声で子ども達に伝えています。
炎天下の中、指導をしている姿には頭が下がりますが、指導をするという事は、その子どもの未来を拓く可能性とともに、未来を潰す可能性がある事を忘れないでほしいです。
指導者達の言葉を文章にすると、指導者達が何も言っていない事が伝わります。
たとえば、サッカーにおいて最も得点が決まりやすい場所はどこでしょうか?
野球において、バッターが最も飛距離を出せる打ち出した時の角度は何度でしょうか?
バスケにおいて、スリーポイントが決まる確率は何%でしょうか?
このような再現性のある科学的な根拠をもって、指導している指導者が日本に何人いるでしょうか?
よく子ども達は「大人になって数学や物理なんて使わない。」等と言いますが、私達の生活の至る所に、数学や物理の世界が拡がり、そしてその考え方は子ども達が夢中になっているサッカーや野球等の上達の為に使う事が出来ます。
たとえば、バッターの打球の初速を毎秒40mとして、打ち出した時の角度によりボールの軌跡がどのように変わるのかを考えてみましょう。
xを打った場所からの水平方向の距離、yを打った場所からの垂直方向の距離とします。
これは物理の力学の考え方を基に、数学の関数を使い、答えを導き出しています。
計算をすると、角度が45度の時が最もボールを遠くまで飛ばす事が出来るという解を得る事が出来ます。
野球においてバッターを指導する時は「もっと強くいけよ。」ではなく「45度で打つようにしてみよう。」がボールを遠くまで打つ為に必要な正しい指導となります。
最近、元プレイヤーよりも、物理学者や心理学者の方が、指導者として優れているのではないかと考えます。
その子どもの才能の仕組み(メカニズム)を理解していく事が、指導者、否、部下を育てる上司にも、子どもを育てる親にも求められ、そこを押さえる事が出来れば、子どもの才能は開花するのではないかと仮説を立てています。