何度生まれ変わっても

 「わあああああ、やめろやめろやめろ。俺から取り立てるな。何も与えなかったくせに、取り立てやがるのか。許さねえ。許さねえ。元に戻せ俺の妹を。でなけりゃ神も仏も、みんな殺してやる。」

 「誰も助けちゃくれない。いつものことだ。いつも通りの俺たちの日常。いつだって助けてくれる人間は、いなかった。雪が降り始めた。どんな時だって、全てが俺たちに対して容赦をしなかった。どうしてだ?禍福は糾える縄の如しだろ?いいことも悪いことも、かわるがわる来いよ。」

 『鬼滅の刃』上弦の陸の鬼・妓夫太郎が妹・梅を失いそうになった時の言葉です。

 

 そんな絶体絶命の2人に手を差し伸べたのは、人間ではなく、鬼でした。

 初めて差し伸べられた手を掴み、梅は生き延びる事が出来、妓夫太郎と梅は鬼となります。

 2月13日最終回を迎えた『鬼滅の刃遊郭編』から、鬼の過去が本格的に描かれ、作品に深みが生まれてきます。

 鬼が鬼になるにも理由があり、その理由を与えたのも人間であり、その恨みの為に鬼は人間を狩るという連鎖が『鬼滅の刃』の根幹にあります。

 そして、主役の炭次郎も一歩間違えたら自分も鬼の道を歩んでいたという自負がある所も、単純な正義と悪という構造ではない作品の魅力です。

 

 「俺の唯一の心残りは、お前だったなあ。何だあ、ここは地獄か?」

 「お兄ちゃあん、嫌だ。ここ嫌い。どこなの?出たいよ。何とかして。そっちが出口?」

 「お前はもう俺についてくるんじゃねえ。」

 「な、なんで待ってよアタシ‥」

 「ついて来んじゃねえ。」

 

 「さっきのこと怒ったの?謝るから許してよ。お兄ちゃんのこと醜いなんて思ってないよォ。悔しかったかの、負けて悔しかったの。アタシのせいで負けたって認めたくなかったの。ごめんなさい。うまく立ち回れなくって。アタシがもっとちゃんと役に立ってたら、負けなかったのに。いつも足引っ張って、ごめんなさい。ねぇお兄ちゃん。」

 「お前とはもう兄妹でも何でもない。俺はこっちに行くから、お前は反対の明るい方へ行け。」

 

 「嫌だ。嫌だ。離れない。絶対離れない。ずっと一緒にいるんだから。何回生まれ変わっても、アタシはお兄ちゃんの妹になる。絶対に。アタシを嫌わないで。叱らないで。一人にしないで。置いてったら許さないわよ。わぁぁあん、ずっと一緒にいるんだもん。ひどいひどい。約束したの覚えてないの?忘れちゃったの?」

 

 「俺たちは二人なら最強だ。寒いのも腹ペコなのも全然へっちゃら。約束する。ずっと一緒だ。絶対離れない。ほら、もう何も怖くないだろ?」

 命が尽きた後、自分は地獄に行くから、妹には自分とは違う道に進んでほしいと願う兄と妹のやり取りです。

 

 正直数年前、遊郭編をコミックで読んだ時は、そこまで心動かされませんでした。

 しかし、アニメ遊郭編はアニメ史に残る名作となりました。

 その要因の1つが、声の力です。

 『ハイキュー』赤葦啓二『東京リベンジャーズ』橘直人等を演じた逢坂さんの妓夫太郎、『HUNTER×HUNTER』クラピカ『PSYCHOPASS』唐之杜等を演じた沢城さんの梅。

 この2人の哀愁に満ちた声による演出が、感動を呼びよせた事は間違いありません。

 そして、2人の兄妹に手を差し伸べた鬼の声は『ハイキュー』宮侑『文豪ストレイドッグス』太宰治等を演じた宮野真守でした。

 声の力が、アニメの魅力を最大値まで上げてくれます。