「俺が…見てきた奴ら…みんなそうだった…酒だったり…女だったり…神様だったりもする。一族…王様…夢…子供…力。みんな何かに酔っぱらってねぇと、やってらんなかったんだな…みんな…何かの奴隷だった…あいつでさえも…」
『進撃の巨人』ケニーの言葉です。
ケニーの言う「何か」を求める神経伝達物質こそ、ドーパミンです。
アメリカでは12%の子ども、日本では5%の子どもが、診断を受けている病気があります。
それは、ADHDです。
「注意散漫」「衝動性」「多動性」3つの問題を抱えていると、ADHDの診断がされます。
もちろん、ただ上記3つの問題を抱えていれば診断がつくわけではなく、3つの問題により日常生活に支障が生じている場合に、ADHDの診断がされます。
脳の側坐核は、私達にドーパミンという快感(報酬)を与える事で、私達を、生存、または遺伝子を残す為の行動へ向かわせます。
しかし、そのような報酬系と呼ばれるシステムは、ただ私達を幸せな気分にする為だけにあるわけではありません。
報酬系は、意識を集中させる為にも欠かせないシステムなのです。
側坐核は、私達が御馳走を食べている時や人と交流している時、性行為をしている時にだけ活発になるのではありません。
四六時中、休む事なく活動しています。
そして、現在私達が行っている事が続ける価値のある事なのかを判断し、その情報を脳の他の領域に伝えています。
例えば、あなたがテレビを観ている場面を想像してみましょう。
あなたの側坐核が、その番組から充分な刺激を受けない、つまり、ドーパミンがあまり分泌されないと、あなたの注意力は散漫になります。
すると、もっとドーパミンが放出されそうな、あらゆるものに目がいってしまいます。
そして、この説明はADHDの人が何故集中が出来ないのか、何故座っている事が出来ないのか、何故授業を受ける事が困難なのかを理解する事に繋がります。
ADHDの特徴が強く現れている人は、多くの人が報酬が得られるものに対して、側坐核が活発に働きません。
つまり、報酬系というシステムを活発に働かせるのに、より大きな刺激が必要となるのです。
授業を聞くという多くの人が報酬系を得られるものに対して、ADHDの人は報酬系が得られない為に、より大きな刺激を求めて、授業と関係のない話をし始め、立ち上がり、教室を歩き回っているのです。
そして、最新の科学では、ADHDの人は、報酬系におけるドーパミンの受容体が少ない事が証明されています。
イーロン・マスクを始めとした経営者や芸能人、さらに多くの偉人には、ADHDと診断をされていた人が多い事が知られています。
彼ら彼女らは、1度成功をしても、すぐに次の挑戦を始めます。
社会は、それを彼ら彼女らの勇気や行動力、決断力の賜物であると称え、それに沿った記事や本、動画等を作り、世界中に彼ら彼女らのように勇気を持ち行動しようと投げかけます。
しかし、彼ら彼女らの行動は、勇気や行動力・決断力の賜物等ではなく、多くの人よりドーパミン受容体が少ない為に、より大きな刺激を求めただけの行動なのかもしれません。
若しかしたら、私達が自分で決断し、行動していると思っている事の多くは、勘違いなのかもしれません。
私達を動かしているのは、私達自身ではなく、ドーパミンなのかもしれません。