偉大な天才は、働いていない時に成果をあげる

 

 「たかには休むのも、ひとつの仕事じゃない?」

 『ムーミン』スナフキンの言葉です。

 

 「ハードに訓練せよ。しかし、それ以上にハードに休憩せよ」という格言が、アスリートの世界にあります。

 身体を鍛えるには厳しいトレーニングが欠かせませんが、それ以上に回復のフェーズが大切である事を言い表した格言です。

 身体や心を良い状態に保ったり、若くいる為に、苦痛が不可欠だとしても、常に苦痛を与えていては心身は病んでしまいます。

 

 筋肉の成長がわかりやすいでしょうか。

 筋肉量を増やす為には、トレーニングで筋繊維を傷付けた後の、休息と栄養補給が必須です。

 休憩を取らずに運動を続ければ、筋繊維を修復する時間が得られず、程なく限界に達した肉体は、様々な不調を訴えはじめます。

 

 運動と聞くと、多くの人はトレーニングの手法にだけ意識を向けがちです。

 脂肪燃焼に聞くエクササイズや正確なフォーム、お気に入りのトレーナーの情報は集めるのに、正しい休憩についての情報を集める人は、ほとんどいないのではないでしょうか。

 

 

 正しい回復が必要なのは、身体だけではありません。

 私達の心の回復においても、多くの人は勘違いしており、間違った方法を選択している事が多いです。

 アメリカ心理学会も「現代人は間違ったストレス解消法を使っている事が多い」と公式声明を出しています。

 寝ころびながらテレビを観る・お菓子を食べる・タバコを吸う等、どれも多くの人が実践している休憩法ですが、これらは完全に無意味とは言わないまでも、休憩としては限定的な効果しか得られません。

 

 

 心理学者のキャリー・クーパーは、ストレス対策に最も必要なのはコントロール感であると発表しています。

 たしかに、仕事をする中で最も仕事の満足度を上げる事の1つに裁量権が挙げられます。

 仮に、あなたが上司に怒られたとします。

 その時に「自分が予算の確認を怠った事が原因である」と怒られた理由がわかっていれば、然程ストレスは溜まりません。

 次からは、予算確認を忘れなければいいだけだからです。

 これに対し、上司に怒られた原因がわからなければどうでしょうか?

 「何で急に怒られたんだ?」「上司に嫌われたのか?」「成績が下がるのではないか?」等の疑念に囚われ、ストレスは一向に消える事がありません。

 

 目的もなくテレビを観て休んでいたら時間だけが過ぎ、自分は何をしているんだろうという疑念が頭を過ぎった。

 買物で好きな商品を購入して気分が上がったが、家に帰ったらすぐに気分が下がってしまった。

 上記のような経験は、誰もが思い出す事が出来るはずです。

 テレビや買物は気楽で楽しい行為ですが、そこには他人から与えられたものを消費する受け身の姿勢しかない為、前向きな気持ちは生まれず、学ぶものもありません。

 休憩にも、コントロール感が必要であり、コントロール感を得られる休憩が正しい休憩法です。

 たとえば、新たなスキルの学習・家族友人等との交流・他者への親切等が挙げられます。

 

 知らない知識や技術を学び、家族や友人と意見を交わし、他人の為に心を配る。

 いずれも積極性が高く、私達のコントロール感が上がる行為です。

 結果としてポジティブな感情が高まり、ストレスから回復しやすくなります。

 自分から動く能動的な活動こそが、正しい休憩法なのです。

 

 他人に優しく出来なくなってきたと感じたら、あなたにとって必要なのは休憩する事です。

 「ハードに訓練せよ。しかし、それ以上にハードに休憩せよ」という格言は、アスリートだけではなく、私達誰にでも当てはまる思考法です。

 龍馬も、大久保も、土方も、20代前半までには、何1つ実績を残していません。

 私は大学時代、龍馬が20代になってもやりたい事が定まらず、空ばかり眺めていた事を知り、勇気を貰いました。

 人生の中に上手く休憩を取り入れていく事が、人生という長い物語を、自分の納得の出来る物語にする為には必要です。