同じ人間の中に善人と悪人が同居している

 大学生の頃、親しくしてくれていた教員が、「田中角栄は、駄目だ。犯罪者だから。」と田中角栄の批判をしていました。

 これに対し、私は、「田名角栄の実績と比較したら、数億円の問題等些細なことではないでしょうか?」と答えたことを記憶しています。

 日本人は、その人が発した1つの言動により、その人を善人か悪人か決めてしまう傾向があります。

 これは、マスコミの影響が大きいように感じています。マスコミは、善人と悪人という対立構造を創り出し、世論を煽ります。

 しかし、人間の思考とは、もっと奥深いものです。

 そのことを漱石の『こころ』で予習することが出来ます。

 「悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変わるんだから恐ろしいのです。だから油断ができないんです。」

 20歳の時に読んだ『こころ』のこの一節は、現在でも事ある事に想い出します。