味噌に入れた塩は、よそへは行かぬ

 「心臓の病気になったので塩分を控えようと思います。」

 先日、このような話を聞きました。

 

 天ぷらそば1杯に6g、梅干し1個に2gの食塩が含まれています。

 日本食は洋食と比較し、塩分が多い傾向にあります。

 1日の塩分摂取量の世界平均が10gなのに対し、日本人の1日の塩分摂取量の平均は12,4gです。

 食塩の過剰摂取は、高血圧のリスクを高める等、健康の敵のように思われている塩ですが、実は塩の働きがなければ、私達は健康に生活する事が出来ません。

 

 

 体内における塩、つまりナトリウムの働きは①体液の濃度の一定に保ち細胞の形を維持する②栄養の吸収の2つが挙げられます。

 特に②栄養の吸収においてナトリウムが果たす役割は、私達の健康に欠かす事が出来ません。

 私達が摂取した栄養は、そのままの状態では細胞の中に取り込む事が出来ません。 

 栄養にナトリウムがくっ付く事で、初めて栄養が細胞の中に取り込まれるのです。

 つまり、塩は鍵であり栄養の運び屋でもあるのです。

 

 

 研究によれば、食塩摂取量を1日3g減らすと、血圧が1~4㎜Hg下がる事が期待出来ると言われています。

 日本人の血圧が平均2㎜Hg下がると、日本全体の脳梗塞や心臓病等の死亡数を年間約3万人減少させる事が出来るとの統計も出ています。

 

 これに対し、塩の摂取と高血圧の関係に疑問を投げかける研究者も存在します。

 アメリカの大学で300人以上の健常者を対象に、食塩水を静脈に投与した増塩時の血圧と、減塩した時の血圧を比較した実験があります。

 これを比較した所、塩の摂取量により血圧が変化しないケースが最も多かったというデータが報告されました。

 塩と高血圧の関連性については、いまだに結論が出ていないとする立場もあるようです。

 

 いずれにせよ、塩は私達の食と健康に欠かす事が出来ない存在である事は間違いありません。

 私達の故郷が海である事を考えても、ヒトと塩は切っても切り離せない関係にあります。

 塩と上手に付き合っていく事が、私達の生活や健康を豊かなものにしてくれます。