「チバさんに誘われた時、正直ちょっぴり興奮したんだ。たとえ、ゲームオーバーになったとしても、まだコンティニューできるのかと。ただ誰かが用意した…あるいは先人が残したパスワードじゃ、つまらんだろう。マップは、常に自分で開拓したい。それがゲーマーというものであり、かつ男の生き様でもある。コレは、俺の物語だ。」
『あひるの空』千秋の言葉です。
旅行に行くと、多くの人がお土産を買います。
しかし、正直私は地方のお土産で美味しいと感じる物に出逢った事がほとんどありません。
それでも、皆、お土産を買います。
何故お土産を買ってしまうかというと、そこでしか買う事が出来ないからです。
お土産はお土産である事で会話のネタとなり、お土産は「ここでしか買う事が出来ない」という物語を作る事により、あまり美味しくなくても生き残る事が出来ているのです。
飲食店の行列等も、同様の物語効果が働いています。
私は、何故、数十分も待ってまで、この店のラーメンを食べたいのか不思議に思う派ですが、それでも飲食店の行列に並ぶ人がいます。
これは「並んでいるお店で食べた」という物語を誰かに伝えたいからです。
並んでいる時も「今まで食べた物よりも美味しいだろう」「初めて食べる味かもしれない」「これをSNSに上げたら、皆見てくれるだろう」等、様々な期待をします。
この期待は、確実に脳内で通常とは異なる脳内物質を出しています。
客を待たせない工夫よりも、わざと客を待たせる方が、飲食店は儲かるかもしれません。
平和を絵に描いてみて下さい。
多くの人が、ハトの絵を描くのではないでしょうか。
他の人類が絶滅をする中で、ホモサピエンスだけが生き残りました。
この要因に、ホモサピエンスだけが、高度な象徴化能力を持っていた事が挙げられます。
象徴化とは、平和という抽象的な概念を、ハトという具体的な形にする事を言います。
ホモサピエンスよりも、大きな脳を持っていたネアンデルタール人も、象徴化をしていた証拠は複数残っています。
しかし、ホモサピエンス程、高度な象徴化をする事は出来なかったと思われます。
ネアンデルタール人の中に、肉や石器はあっても、平和等の抽象的なものはなかったでしょう。
また、高度な象徴化が出来ないと、過去や未来の話も出来ません。
仲間と情報や考えを共有する為に、象徴化はとても重要になります。
象徴化という能力を手に入れた事で、ホモサピエンスは集団の中で仲間と生活する事に成功し、異なる集団間でもやり取りをする事も可能になりました。
これが数ある人類の中で、ホモサピエンスだけが生き残った現在最も有力な仮説です。
象徴化とは、物語です。
上記のお土産や行列が出来る飲食店に並ぶ人の心理も、象徴化であり、物語に惹かれての事になります。
商品を提供するのではなく、物語を提供する。
これが、今昔も変わらぬ生き残り戦略です。