団長は選んだ。100人の仲間の命を切り捨てることを選んだ

 

 「は?何が間違ってないって?兵士がどれだけ余計に死んだと思ってんだ?」

 「ジャン。結果を知った後で、選択をするのは誰でもできる。でも…選択する前に結果を知ることはできないだろ?あの巨人の正体は誰か?何人いるのか?何ができるのか?何を知っているのか?わからないよ。いつだって、わからないことだらけだ。でも時間って流れるし、止まったりしてくれない。結果がわからないのに、選択の時間は必ずくる。」

 

 「結果責任って言葉も知ってる。便利で正しい言葉だと思う。どれだけの成果をあげようと…無駄死にさせた結果がなくなるわけじゃない。確かに団長は非常で悪い人かもしれない…けど僕は…それでいいと思う。あらゆる展開を想定した結果、仲間の命が危うくなっても。選ばなきゃいけない。100人の仲間の命と、壁の中の人類の命を。」

 「団長は選んだ。100人の仲間の命を切り捨てることを選んだ。」

 『進撃の巨人』ジャンとアルミンの会話です。

 

 

 人の上に立つ人には、ルールを決める責任があります。

 戦争や政治のイメージが先行して、権力=悪と結びつける人が多いです。

 しかし、人が権力を持つを持つ事は悪い事ではなく、むしろ、会社という組織を動かし、持続的なものにしていく上では欠かす事が出来ません。

 権力とは、権利を持つ事を許された人が、それを正しく行使するという事です。

 

 

 ただし「良い権利」と「悪い権利」を分けて考えなくてはいけません。

 その権利が「良い権利」である事には、ある条件があります。

 その条件とは、その権利の範囲が文章として明確に決まっているかどうかです。

 たとえば、誰に聞いても「それは部長が決める事だ」と全員一致で言えるような事です。

 

 これに対し「悪い権利」とは「文章として明確になっていない曖昧な権利」の事を指します。

 「悪い権利」を象徴する表現として既得権益という言葉が使われます。

 たとえば「一番先輩であるAさんに話を通さないといけない」「本当はメンバー全員が前もって納得しておかないといけない」等です。

 

 明文化されていない裏のルールが、あなたの会社にもあるのではないでしょうか?

 権利を持っていないのに、権利を持っているように振る舞う。

 そのような影の実力者が、どのような会社にも存在します。

 

 

 そして、このような明文化されていない裏のルールが、会社内で最もトラブルを生む原因となります。

 その理由は、その「悪い権利」がある事により、認識のズレが生じ、人によって言う事が違ってくるからです。

 

 たとえば、新入社員が自分の仕事を覚え、上司の確認を取り、新しい顧客を獲得してきました。

 すると「そんなの聞いていない」と、ベテラン社員から不満が出ました。

 

  新入社員「上司に了承を得ました。」

  ベテラン「いや、その業界の顧客は私が前に担当していたよね。だから、私に話を通さないと。」

  新入社員「そんな事、どこにも書いていないですよね?」

  ベテラン「書いてなくても、それくらい雰囲気でわかるでしょ?」

 

 こうしたやり取りが多発すると、能力が高い若手社員程、その会社に嫌気がさし、辞めていきます。

 仮に、ベテラン社員に話を通すべきであるのなら、上司がそう伝えなければなりません。

 上司には、新入社員や中途社員に、自分の言葉で説明する責任があります。

 

 或いは、上司が「そのルールはおかしい」と判断するのであれば「悪い権利」として、そのルールをなくしておかなければなりません。

 これらの問題は、いずれも「上司が責任をとって決めていない」事が原因です。

 

 

 これに似た例は、会社組織において数多く発生しています。

 

 「なぜミスしたんだ?」と個人を責めるのは、やめましょう。

 「どうすれな防げたのだろう?」と仕組みを責めましょう。

 個人を責めるか、仕組みを責めるか、その一瞬の判断の積み重ねが、あなたの未来を決めていきます。