「場所を変えなきゃ…見えねェ景色もあるんだスモーカー…。」
『ONEPIECE』ローの言葉です。
…ある男が、銀行から融資を受けて会社を設立したが、会社はすぐに倒産してしまいました…
…男は鬱になり、自ら命を絶ちました…
あなたなら、この話をどのように解釈しますか?
あなたが経営者であれば、起業が失敗に終わった理由を知りたいと思うでしょう。
その男には、リーダーとしての資質が足りなかったのか?戦略を間違えたのだろうか?競争が厳し過ぎたのだろうか?等というように。
あなたが心理学者であれば、何故自殺に至ったのか理由を知りたいと思うでしょう。
その男が、自殺した理由は会社が倒産したからだけなのか?鬱病に対する治療は出来ていたのか?支えてくれる家族はいなかったのか?等というように。
あなたが作家であれば、この物語をどうすればギリシャ悲劇のように物語に発展させられるかと頭をひねるでしょう。
他にも銀行に勤めている人であれば融資部のミスであると、社会主義者なら資本主義の落とし穴であると、精神科医であればセロトニンの低下によるものと考えるかもしれません。
では、一体どれが正しい視点なのでしょうか?
私は、どの視点も正しくないと考えます。
理由は、どの視点も、自分の得意分野のみに偏った視点である為です。
「道具がハンマーしかない者は、どんな問題の中にも釘を見るものだ。」
アメリカの作家、マーク・トウェインの言葉です。
経営者も、心理学者も、作家も、他のどのような仕事でも、その職業に就く為、ある程度の専門の教育を受け、自分なりの試行錯誤を繰り返し、その知識・技術・経験を磨いていきます。
しかし、多くの人は、そのような自分の専門分野内の限られた思考モデルだけを身につけて、その周辺に留まってしまいます。
そして、遭遇する問題を全て、その僅かな思考モデルを使って解決しようとします。
職業による視点の誤りは、害になる事もあります。
自分の得意分野における物事への対処法を、それが全くそぐわない場所で使用する可能性が高いのです。
母親になった女性が夫を子どものように扱ったり、教師が友人を教え子のように叱ったり、医師が仕事を離れても全て周囲の人が環境を整えてくれると思い自分から何もしなかったり等、あなたも上記のような場面を目にした事があるのではないでしょうか?
自分の得意分野においてハンマーを持つと、人はそのハンマーを酷使し過ぎる傾向があります。
自分の脳に、2つか3つの思考モデルを追加するよう心懸けましょう。
あなたの得意分野とは異なる思考モデルを習得するのです。
たとえば、心理学の思考を身につているのであれば、物理学の視点や歴史の視点からも、世界を観察する事が出来るように。
新しい分野の重要な思考モデルを自分のものにするには、1年程掛かります。
しかし、それだけの価値がある事を約束します。