「わたしのお父さんとお母さんも、ケンカばかりしてました。結婚以前なんて、そりゃもうラブラブの絶頂だったらしいですけど。わたしは、仲良くしているお二人というのを見たことがないのです。」
…でも、離婚なんてしない。そう思っていた‥そうだ。家族とはずっと一緒にいるものーそれが、当たり前なのだと…
「当たり前って言うなら、ケンカしたり、嫌いになったり、そっちの方だってーそんなこと当たり前なんですよね。好きなものを好きでい続けるためには、二人がずっと一緒でいるためには、きっともっと頑張らなけれないけなかったんですよね‥。」
「あんまり純粋な感じもしないけどな。好きでいるために頑張るってんなんかさ、努力してるみたいじゃないか。」
「でも阿良々木さん。わたしたちが持つ好きっていう感情は、本来すごく積極的なものではないですか。」
『化物語』八九寺真宵と阿良々木君の会話です。
環境への配慮が叫ばれる中、日本の住宅のライフサイクルは短く、さらに、洗浄等に使われる水の節約も大きな課題です。
そこで、注目されているのがカタツムリです。
カタツムリは、自分の体液で殻を作っています。
カタツムリの殻について調べると、水の中にある時だけ油汚れが付きにくい性質がある事がわかりました。
また、表面を細かくみると、目には見えない程の小さな溝がたくさんあります。
この溝が雨どいのような役割を果たしており、水が殻の表面に入り込んで、油汚れを洗い流してくれています。
このカタツムリの仕組みを応用して、雨できれいになる家のタイルや、水垢や最近の汚れを防ぐトイレ等が開発されています。
…確かに‥頑張って努力すべきなのかもしれない。消えてなくならないように…
「好きなものに飽きたり、嫌いになったりするのって、つらいじゃないですか。つまらないじゃないですか。普通なら十、嫌いになるだけのところを十好きだった分、二十嫌いになったような‥そんな気分になるじゃないですか。そういうのって凹みますよ。」
…そういうこと‥なのかもしれない。前のめりにウエイトがかかっているからこそ、反対側に振れた時の反動の深さも幅も‥大きい…
「八九寺ーお前は、お母さんのことが好きなんだな。」
「もちろんです。お父さんのことも。だからこそ不安で‥怖いんです。こうしてずっと逢えないでいるうちに、わたしは、お母さんのことを忘れてしまうんじゃないかって。」
…だから、八九寺は蝸牛(カタツムリ)に魅入られた…
…八九寺の好きであり続けなければーという努力が、その踏み込みの深さ‥その願いが…
『化物語』阿良々木君の脳内言葉、八九寺真宵の言葉、阿良々木君と八九寺の会話、そして、阿良々木君の脳内言葉です。