「小雪、聞いて。お父さんとお母さん、離婚するの。」
…え。お父さんと、お母さんが、テレビで見るような仲良し夫婦でないことも、だんだん小さい頃に比べて2人があまり会話をしなくなっていたことも、たまに私の見ていない所で言い合いをしていたことも、本当は全部気付いていた…
…けど、それでも、私がお母さんと仲良くて、お父さんからは愛されているという安心感が、私が2人を繋ぎ止めているという自信があったから、大丈夫だって思ったのに…
…お父さん‥本当にもういないんだ‥お父さんにとって、私はいなくてもいい存在なの?…
『氷の城壁』小雪母の言葉と、小雪の脳内言葉です。
中学・高校時代、私に近づいてくる女性から「これ以上は踏み込めない壁」が存在しているという経験を複数回経験しました。
私は、女性の方から、こちらに近づいてきているにも関わらず、何故「これ以上は踏み込めない壁」があるのか理解が出来ませんでした。
少しずつ話を聴いていくと「これ以上は踏み込めない壁」が存在する女性は、母子家庭であったり、祖父母に育てられていたりと、家庭内に問題を抱えていました。
彼女達は、普段の教室や部活では明るい自分を演じる事が出来ても、人と深い関係を築く事を、無意識的に避けているようでした。
私は、現在の中学生・高校生が、羨ましいです。
私は、学生の頃から現在に至るまで、自分が理解出来ない事や理解出来ない感情と出逢った時には、本から、その答えを探す事が習慣化しています。
しかし、中学生・高校生の頃の私の愛読書であった『ONEPIECE』『SLUM DUNK』『バガボンド』や司馬遼太郎、髙橋歩の本等には「これ以上踏み込めない壁」が何であるのか、何故そのような壁が出来るのか、どのようにアプローチをすればいいのかが書かれていませんでした。
無理矢理、謎の解釈をして『ONEPIECE』や高橋歩の言葉を、伝えていたりしました。
現在の中学生・高校生は、私が中学生・高校生の時に出逢えなかった解に辿り着く事が出来ます。
『正反対な君と僕』『氷の城壁』『化物語』『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』『やはり俺の青春ラブコメは間違っていた』等を読めば「これ以上踏み込めない壁」が何であるのか、何故そのような壁が出来るのか、どのようにアプローチをすればいいのか等を知る事が出来ます。
私が、中学生・高校生の頃には、授業に対する教科書はありましたが、学校生活に対する教科書はありませんでした。
現在の中学生・高校生には、学校生活に対する教科書が、多数存在しています。
たとえば、あなたの母親の記憶の1つに、鏡を見ながら、自分の粗探しをしている姿があるとします。
きっと、あなたは、思春期を迎え、大人になってからも、母親と同じ行動をする可能性が高いです。
そこで、ふと気付くのです。
自分は、母親の、そのような姿が好きではなかった事に‥。
受け継いだ世界観や行動パターンは、自分自身との対話の中に、度々現れます。
「それは、私にみたいな人間には向かない。」
「誰も信用出来ない。」
「私は、何も出来ない。」
若しかしたら、あなたも、自分に対して、上記のような事を、言っているかもしれません。
頭の中の上記の様な言葉は、あなたの人生を誤った方向に導くだけではなく、あなたの子どもの人生にも大きな影響を与え、子ども自身も、自分自身や他人を批判し、自分自身も他人も信用する事が出来ない為、人と長期的な関係を築く事が出来ない世界観を持ってしまいます。
親の内なる声は、子どもに伝わります。
子どもは、その時は言語化する事は難しくても、感覚で理解しており、大人になるにつれ、子ども時代に感じ取った親の内なる声が、子どもの人生の大きな壁となっていきます。
子どもに幸せになってほしいと願うのであれば、あなた自身の内なる声を、良いものに変えていく事が必要です。
「結城~お前もっと声を出せ。」
「はい‥!」
「‥暗いな~霧中バスケ部は、明るさが命!たとえ試合が劣勢でも声は出せ!」
「はい‥!」
「声が暗い!結城が大人しいけど、自分で自分はそういう人間だと決めつけるなよ。楽をするな!自分の殻は破れ!!」
「??はい‥。」
「結城先輩と熱川先輩達って仲悪いのかな‥」「聞こえるって」
…輪の中で馴染めず、どこにいても、そこが自分の居場所がないようで、日に日に自分が、自分じゃなくなるような感覚と…
…家のこと‥いつ美姫に話そう…
「こゆんはさ~五十嵐の何がそんなに嫌なの?ちょっとかわいそう。あんなに好きでいてくれいるのに。好かれているだけいいじゃん~贅沢だよ。」
…人と気持ちを共有し合えない空虚感と。もしかすると、自分は誰にとっても、いてもいなくても良い存在なのかもしれないという不安が、ゆっくりとじわじわと心を壊していって…
…あーどうしよ‥部活‥行かなきゃいけないのに‥立てない。ドアを開けたくない…
…あの時、私は、輪の中にいる方が孤独だった…
『氷の城壁』小雪の脳内言葉です。
最新の研究においては、従来通りの家族でも、慣例に囚われない家族でも、家族構成そのものは、子どもの認知や感情の発達に、大きな影響は与えない事という結果が出ています。
親がゲイでも、バイセクシャルでも、血縁関係がなくてもいいのです。
大切なのは、家族構成ではなく、どのように暮らしているのかです。
イギリスでは25%以上の子どもが1人親家庭で育ち、日本においても1割弱の子どもは1人親家庭で育っています。
子どもの生活の中にいる人々人が、子どもの世界を構築します。
子どもの世界は、豊かで愛に溢れたものにもなりますが、時として貧しく愛がないものにもなります。
家族間の人間関係に気を取られたり、親と愛着関係が構築出来なかったり、帰属意識が揺らいでいると、子どもは、より広い世界に対して自由に好奇心を持つ事が出来なくなります。
好奇心の欠如は、学ぶ意欲や集中力の低下に繋がり、現代においても、自分が生まれ育った街から出る事が出来ない大人を作り上げていきます。
家族間に問題を抱えている子ども程、実家や地元を出ない事も、納得出来ます。
「両親の仲が上手くいっている事は、子どもが幸せに育つ為に最も重要な要素である」
この問いに、10代の子どもの70%は「同意する」と答えました。
これに対し、親の同意は33%しかありませんでした。
これは、家族間の関係が上手く機能していない時に、子どもが受ける精神的苦痛が、親には見えていない事を意味します。
夫婦であれ、パートナーであれ、1人の人と長期的な関係を構築する事は、大変な事です。
感情をぶつけ合う事は疲弊しますし、自分の嫌な一面とも向き合う必要があります。
しかし、そこから逃げていては、誰とも長期的な関係を築く事が出来ません。
そればかりか、そこを避けた人生を送ってきた人が、結婚をしてしまうと、必ず不幸になります。
もし、子どもを授かった場合、その不幸は、子どもにも、多くの確率で引き継がれます。
まずは、自分の内なる声と、向き合う事をお勧めします。