「湊は違うかもだけど、我慢のし過ぎで、ストレス溜めまくって、仕事出来なくなった友達、周りに結構いるから‥。」
「全部を人の思考に委ねられるぐらい馬鹿になれるんなら、それでいいんだけどな。考えた上で、自分の意思を殺し続けてたら‥突然ポキッって折れて、潰れるから。お前には、そうなってほしくない。」
「‥‥まだ遠いよ。社会人デビュー。」
「確かに。」
「ま、どちらかと言えば、空気読むスキルの方が必要なんだけど。かといって、大勢が集まった時に、全員が同じ意見になることの方が少ない。ー‥何故なら、俺のような人間がいるから。」
「兄ちゃん、本当に店で浮いてない?」
「失礼な。」
「好き・嫌い、正義・悪、人の数だけあるから。持論と自我は、ちゃんともっとけ。あとそのことに対する自覚。自分が何でそう思うか。結局自分が自分のこと、ちゃんと理解してねーと‥人とぶつかりあった時に、反論することも、人の意見とすり合わせることも、間違えた時に反論することも出来ねーからな。」
「‥‥兄ちゃん、何があったの?」
「俺も、いろいろあって丸くなったんだよ。」
『氷の城壁』湊兄と湊の会話です。
メンタルが、不調になったり、快調になったりする原因は「ストレッサー(刺激)」に対して、どのような認識をして判断を下すかという「認知」が大きく関わっています。
私は、ここ数年この「認知」の事を「世界観」と呼んでおり、その人が引き起こす問題の殆ども、逆に、その人が幸せでいる背景の殆ども「世界観」が影響しているという仮説を立てています。
「ストレッサー」を強く感じる時には、判断にも偏りが生じ、その結果として、強過ぎる不安が拡がったり、何もしたくないような気分になったりと、悪循環が生じます。
そこで、頭の中に自然に浮かぶ考えやイメージに着目し、そこに現実からほど遠い「認知の偏り」があった場合に、そこから生まれた行動を客観的・現実的に捉えて「偏った認知」を変えていく方法があります。
これを「認知行動療法」と呼びます。
「認知行動療法」は、私達の「認知」と「認知に基づいて行動した結果」について考えて、気持ちを楽にしていく心理療法の1つです。
たとえば、あなたが「自分は駄目な人間で臆病である」と普段から思っているとします。
このような「認知」を持っていると、強い「ストレッサー」に直面した時に、上記のイメージ通りの行動をするようになります。
大勢の人の前で、発言をしなければならないという強いストレスが掛かるような場面では、大勢の前では発言をしないという行動を取るようになります。
このように「認知」と「行動」は、表裏一体なのです。
私達は、ストレスを抱えると、物事の視野が狭くなり、それにより余計に気分が落ち込むという悪循環に陥ってしまいます。
客観的に現実を見つめる事で、柔軟に考えたり、気分を変える事も出来るようになります。
このように、自分が「偏った認知」を基に行動している事実を集めて「認知の歪み」を実感したり、事実を基に柔軟に考えたり、回避せずに行動出来る方法を探していく事が「認知行動療法」です。
これにより、メンタル不調を減少させる事が出来ます。
自分の「認知」を探っていくと「自分でも無意識に何気なく思い浮かんでしまう心の声」に気づきます。
この声を「自動思考」と呼びます。
たとえば、仕事においてプレゼンの資料を作成している時に「明日のプレゼン失敗したらどうしよう」「きっと頭が真っ白になって失敗するだろう」「失敗したら見放されてしまうだろう」等という思いが、浮かんでくる人も多いのではないでしょうか?
これが「自動思考」です。
「自動思考」は、自分でも根拠なく、思い浮かぶ考えの事です。
「自動思考」は、自分でも考えるつもりはないのにも関わらず、自分の頭の中で瞬間的に生み出されます。
この「自動思考」の影響により、実際に、プレゼンをしている時に、本当にミスをしてしまう人が多いです。
同じ行動でミスをしたり、同じ行動で失敗してしまう場合には、自分の「自動思考」が何であるかを検証してみる事をお勧めします。
では「自動思考」を検証してみるには、どうすればいいのでしょうか?
この続きは、また後程。