「怪異ってのは人間の信仰で、できてるようなものだからね。吸血鬼がそうして最強の怪異なのか、わかるかい?それは誰もが吸血鬼のことを最強の怪異だと思っているからだ。怪異は周囲の認識通りに現れる。周囲の期待通りに振るまう。」
『化物語』忍野の言葉です。
「産みの苦しみがあるからこそ、子は可愛い。」等という意見を耳にします。
理解出来る部分もないわけではありませんが、経済的余裕があるのなら無痛分娩で生んだ方がいいと思います。
お金を払う事で、痛みや苦しみが軽減されるのなら、合理的な選択です。
また、通称分娩で生まれた子と無痛分娩で生まれた子への、愛情に違いが生じたという事を証明したデータもありません。
産みの苦しみとともに、日本で推奨されているのが母乳育児です。
実は、最新の科学において、母乳育児が子にとって明らかに良いと推定出来るデータは、ほとんどありません。
母乳育児の赤ちゃんにとってのメリットには、風邪・感染症の減少、アレルギーの減少、胃腸障害の減少、乳幼児突然死症候群の減少等が挙げられます。
このどのメリットも、母乳育児をした赤ちゃんと、母乳育児をしていない赤ちゃんとを比較した場合、特筆すべき差異は見つかっていません。
また、子どもにとってのメリットとして、IQが高くなるというものも挙げられています。
1980年代に実施された研究で、北欧の345人の5歳児に対し、母乳栄養を与えられた期間が3カ月未満の子と、6カ月以上の子のIQスコアを比較しました。
結果は、母乳栄養を6カ月以上与えられた子の方が、スコアが7点高いというものでした。
しかし、その両親を調べると、母乳育児をした母親は、母乳育児をしていない母親よりも裕福で、高学歴、自身もIQが高い事がわかりました。
アメリカやヨーロッパでは、高学歴な人程、母乳育児を推奨する傾向があるようです。
この研究からは、母乳育児ではなく、母親のIQの方が、子どものIQに大きく影響しているという結論を出す事が出来、つまり母乳育児がIQを高くするわけではない事が理解出来ます。
上記のように、因果関係には気をつけなければなりません。
たとえば、プロテインバーを購入する人は、健康的であるという研究結果が発表がされます。
たしかに、プロテインバーを購入する人は健康的である事が多いですが、これはプロテインバーの影響ではなく、元々プロテインバーを購入する人は、健康について考え、食事に配慮し、運動を続けている可能性が高いです。
このように、研究結果は一面のみを見るのではなく、多面的に見る必要があります。
ママにとってのメリットには、避妊が不要、体重減少、赤ちゃんとの絆の強化、経済的、ストレス耐性向上、骨粗鬆症のリスク軽減、乳がんのリスク軽減、産後うつ病のリスク軽減等が挙げられます。
これも、相関関係を示すデータは、ほとんど見つかりません。
母乳育児をしていても妊娠する可能性がゼロになるわけではないし、母乳を出し続けていれば体重は減少しますがその分より多くのエネルギーを摂取しなければなりませんし、母乳や搾乳を苦痛と感じるママが少なくない事も事実です。
上記の中で、唯一相関関係があるのは、乳がんのリスク軽減です。
母乳育児をする事で、乳がんの発症率は、20~30%減少します。
母親の経済的状況への配慮がない為、上記の研究結果も完璧ではありませんが、それでも生物学的メカニズムに着目するという意味では信頼に値します。
授乳で乳房の細胞に変化が生じ、発がん物質の影響を受けにくくなります。
さらに、エストロゲンの生成が低下し、乳がんリスクが減少するというメカニズムです。
母乳は魔法の栄養等、誇張されたコピーに惑わされる必要はありません。
母乳を与えるという行為自体に、幸せを感じるという人も多いでしょう。
しかし、そう感じない人もおり、母乳育児をしないという選択がママと赤ちゃんに将来与える影響も、極僅かです。
忍野の言葉通り、産みの苦しみや母乳育児推奨等も、人間の信仰で出来ているような怪異のようなものです。
母乳育児を選択する事も、母乳育児をしないという選択も、どちらも尊重されるべきであると思います。