富樫という生き方

 

 「私自身、仙水は納得出来たんですけど、夏油は納得が出来ていなくて。」

 『呪術廻戦』作者の夏油傑の闇落ちに関する言葉です。

 

 

 『HUNTER×HUNTER』のJUMP連載再開が発表されました。

 私は、4年程前にJUMPにおいて『ONEPIECE』は模範となる学級委員長『HUNTER×HUNTER』は学校に来ない天才という表現をしました。

 世界一競争の激しい週刊誌において、約4年の休載が許されるのですから、如何に『HUNTER×HUNTER』が特別な作品であるかが理解出来ます。

 私自身、毎週JUMPを購入し、始めに1番後ろの作者コメント等のページを見て、「今週の『HUNTER×HUNTER』は休載いたします。」という言葉を見て、どこか落ち着くという謎の感覚を得ています。

 また、休載中も、ユニバーサルスタジオや個展、JUMPSHOPやアニメイトにおけるフェア等、数々のコラボが開催されている事からも、特別な作品である事を再認識出来ます。

 

 『呪術廻戦』作者は作品における縛りを『HUNTER×HUNTER』の誓約と制約に影響を受けている事を公言し、『東京喰種トーキョーグール』作者は『HUNTER×HUNTER』のヒソカの大ファンである事を公言し、『食戟のソーマ』作者はクロロやヒソカのような魅力的なキャラクターを作りたいと公言しています。

 

 私は、闇落ちするキャラクターを好きになる傾向にあります。

 キャラクターから零れ落ちる本音の中の闇の部分を見る事が出来た時、私達はそのキャラクターをキャラクター以上の存在として捉える事が出来ます。

 そして、この闇落ちという文化こそが、日本の漫画・アニメを世界一のクオリティにした要因の1つであると考えています。

 

 その文化を作り上げた人物が『幽遊白書』『HUNTER×HUNTER』の作者である富樫であると、私は考えています。

 

 闇落ちのパターンは、2つに分類されます。

 1つ目は『幽遊白書』仙水のように、善人であり人を助け続けている中で、人の醜い部分を幾度も見て、人に絶望をし、闇落ちをするパターン。

 『呪術廻戦』夏油傑がこのパターンです。

 2つ目は『るろうに剣心』宗次郎のように、力を持たない子ども時代に過酷な環境下に置かれ命の危機の中、闇の人物に助けられ、闇落ちをするパターン。

 『僕のヒーローアカデミア』死柄木弔がこのパターンです。

 

 ちなみに私は『呪術廻戦』においては夏油傑が、『僕のヒーローアカデミア』においては死柄木弔が1番好きなキャラクターです。

 

 

 Aチームの被験者には「健康的ではないアイスを食べて貰います。」と伝えます。

 Bチームの被験者には「健康的なケールを食べて貰います。」と伝えます。

 それから、両チームにアイス、ケール、スパム(まずい上に不健康)の類似性を判断して貰いました。

 

 すると、Aチームは「ケールとスパムが似ている」と答えました。

 理由は「美味しくないから」という答えでした。アイスを食べて貰ったAチームは、味の点で評価していました。

 Bチームは「スパムとアイスが似ている」と答えました。

 理由は「身体に悪いから」という答えでした。ケールを食べて貰ったBチームは、健康の点で評価していました。

 

 つまり、私達は、ある物事がいったん自分の経験に基づくと、その物事を肯定的に捉える傾向があるのです。

 脳は、自分の経験を出来るだけ有効活用する為に、その経験にとって都合の良い視点を演出する事が得意なのです。

 そして、その視点が一旦しっくりくると、中立的な見方をする事は出来なくなり、一方的な角度からしか見えなくなります。

 

 映画館で観た映画を良い映画であると答える人が多いのは、チケット代を払い、わざわざ映画館にまで足を運んでいた時間が、脳にそのように判断をさせているからかもしれません。

 

 もしかしたら、私を含めた『HUNTER×HUNTER』に魅了されている人達も、自分の経験にとって都合の良い解釈を脳がしているだけかもしれません。

 それでも、それこそが漫画やアニメの魅力でもあります。

 

 『幽遊白書』『HUNTER×HUNTER』という0からの世界観を作り出した大ヒット作品を、2つも生み出した天才の帰還を心待ちにしています。