…道に迷って。たった1人で立ち尽くしている時に。おかしいのは自分だから。おかしいのは自分だから…
「だから誰にも頼らない‥なんて‥言えねえよ僕は。お前だって、そうだったろう。戦場ヶ原。ーだから‥こいつが迷い牛か蝸牛か知らないが‥お前にも、八九寺の母親にも、姿も‥匂いすらも感じることはできないんだろうけど。コイツを無事に母親の所まで送り届けるのがー僕の役目だ。」
…帰るべき場所を探す。だって自分の家っていうのは、物理的な建造物というだけの意味じゃないはずだろう。自分の想いが宿っている場所だろう…
『化物語』阿良々木暦の脳内言葉と言葉です。
30年間給料が上がらず、物価だけが上昇している国、日本。
その物価には不動産価格も含まれ、多少の波こそあれど、価格は上昇し続け、2000年と2021年を比較した場合、東京23区のマンション価格は約2倍にまで跳ね上がっています。
オリンピックが終了すれば不動産バブルは弾けると誰もが予想していたにも関わらず、オリンピック終了後も不動産価格は上昇しています。
しかし、不動産価格が上昇しているのは都心や地方都市の駅前物件等、少数である事も事実です。
東京でいえば、都心・駅前・駅近が、マンション価格が下がらない物件の定番です。
東京では、車を持っていない人が、ほとんどです。
その為、駅近・駅前物件の需要は、落ちにくいです。
また、現在は共働き世帯が多い為、通勤や買物・レジャー等において、利便性を大事にする事も、駅近・駅前物件が人気である事の理由の1つです。
これらの理由から、若い世代程、駅近・駅前物件を好みます。
都心7区(中央・千代田・港・渋谷・新宿・文京・品川)であっても、駅から1分離れるごとに、中古マンションの成約価格は平米18,000円、坪50,000円程度下がっていく傾向があります。
たとえば、65平米のマンションですと、1分離れると約100万円、5分で500万円、10分で1,000万円下がるという計算です。
空間よりも時間・利便性が求められる傾向は、都心だけではなく、地方でも見られています。
都内の様々な御宅を訪問すると、最近は地方から利便性のいい都内のマンションに引越しをしてきたという70代・80代の世帯をよく見かけます。
子どもが巣立ち、夫婦だけになった世帯には、築30年・40年経った郊外の戸建ては、負担が大変になってきます。
掃除も、庭の手入れも、車の運転も、面倒になってきます。
駅近・駅前のマンションであれば、掃除も最低限で済みますし、庭の手入れも必要なく、車の運転も必要ありません。
さらに、子どもや孫も遊びにきやすくなります。
現代の不動産は、駅徒歩15分の100㎡よりも、駅徒歩5分の50㎡の物件にこそ価値があります。
「ただいまッ!!帰りましたッ!!」
…僕には‥何も見えなかったけれど。ーたぶん八九寺はそこに何かを見つけたのだろう。八九寺の止まっていた時間に代わって、新しい時間が始まったのだろう…
「彼女‥何か言っていたの?」
「うん。ただいまーって‥。」
「‥そう‥なんだかそれは、とてもいい話のように思えるわ。」
…八九寺はー帰った。無事、自分の想いの宿るところに。僕もそろそろ家に帰るべき時間だ…
『化物語』八九寺真宵の言葉と阿良々木暦の脳内言葉、戦場ヶ原ひたぎと阿良々木暦の会話、そして、阿良々木暦の脳内言葉です。
素晴らしい物語は、ただいまという日常の言葉だけで、泣かせてくれます。
否、誰もが使う言葉であるからこそ、泣けるのかもしれません。
そして、ただいまを言うには、帰るべき自分の思いの宿る場所(家)が必要です。