「なんでさ…歩けるのに杖ついたり、車イスに乗ったりしてんの?」
「んあー…おかしいか?」
「まあ…歩けるなら不要なもんだし。」
…いつか本当に歩けなくなるシャロンのこと考えたら、ヤンじいはふざけてるようにしか見えん…
「ムッタは、遺伝ってやつをどれくらい信じてる?」
「え…遺伝?…できるだけ信じたくねーな。」
「ワシの親父も祖父もな、ホットドッグが大好物だった。ワシと同じように太ってて、身長も同じだった。何より飛行機やロケットが大好きなところまで同じときてる。こりゃもう滑走路の如く一直線な遺伝だ。」
「そんな親父もじいさんも、晩年に足を悪くしてな。だから、ワシもそのうち悪くなるだろうなと思ってるわけだ。杖の使い方も、バギーの操作も、今のうちにバッチリ訓練しとこうという作戦だ。フフフ楽しいもんだぜ。」
『宇宙兄弟』ムッタとデニールの会話です。
皆さんは、遺伝を信じますか?
科学の進歩により、見た目も、頭の良さも、性格も、病気の発症率も、あらゆる事において遺伝の影響が大きい事が証明されています。
では、頭の良さ、頭の良さというと抽象的になってしまう為、IQはどの程度遺伝により決まると思いますか?
現段階においては、IQは70%遺伝で決まるとされています。
成人を対象とした初期の双子研究では、IQの遺伝率を57~73%としていました。
しかし、より近年の研究では、IQの遺伝率は、80%とする研究もあります。
IQは70%遺伝で決定するという事実に対して、どのように感じるでしょうか?
「自分が頭が良いのは両親のおかげだ」と感謝するでしょうか。
「遺伝で決まるのであれば努力しても意味がない」と諦めるでしょうか。
しかし、IQの遺伝率が0%の人達がいると言ったら、あなたは信じますか?
0%という事は、IQに生まれ持った遺伝子が、殆ど影響しない事を意味します。
0%の人とは、貧困に苦しむ人達です。
お金がないという事は、少し収入が変わるだけで、生活が大きく変わる事になります。
少し収入が増えれば、栄養がある物を食べられるようになるし、教育を受ける事も出来るようになります。
このように、貧困に苦しむ人達は、環境が変化した時の影響が大きい分だけ、遺伝率が低くなる傾向にあります。
とはいえ、そのような環境に置かれているのは、アフリカやインド等の限られた国の子ども達であり、多くの日本人には上記の定義は当てはまらないように思います。
しかし、日本においても、お金持ちの子どもの方が栄養の高い物を食べ、教育環境の整った場所に住み、子どもの教育に投資が出来ます。
過去10年程で、日本の格差は拡大していますが、その格差拡大の原因は、ここにあると私は考えています。
たとえば、ハーバード大学やオックスフォード大学、日本においては東京大学等の超名門大学の学生だけに限って、IQの遺伝率を調べたらどうなると思いますか?
正解は、IQの遺伝率は、70%を超え、研究者の中では90%を超えると推測されています。
理由は、名門大学に通う学生の家庭は、上流階級が多く、優れた教育を与えられてきた学生ばかりであるという、似たような環境で育った人達ばかりだからです。
あなたが、何かに挑戦したいと考えた時、そこに挑戦している人達の偏りに注目してみましょう。
似たような環境で育った人ばかりが挑戦する事であれば、生まれ持ったIQが勝敗を決する事が多いです。
これに対して、様々な環境で育った人が挑戦するような事であれば、生まれ持ったIQで勝敗を決する事は少なくなります。
才能とは、時と環境と場所による偏りです。
そのような視点で、虚心坦懐に世の中を観察し、様々な行動を起こし続けていれば、いつかあなたの才能に辿り着く日がある事を約束します。