教養は第三の天性なり

 「花魁って知っていますか?江戸時代の超高級フーゾク嬢です。それでは問題、花魁になる為には何が必要でしょうか?」

 「そんなのまずカオでしょ。あとはエッチうまいかどうか?じゃあたしなれるかもな。」

 「貴方じゃ無理です。花魁になるには教養が必要です。古典。文学を知らねばなりません。囲碁、将棋。ゲームの相手が出来る事はもちろん、舞踊や歌や三味線やお琴。果ては茶道や華道、世情の話。ひとつも無礼のない完璧なしぐさ、知識量。書道を習い、文字まで美しい。そして何より、どんなに金を積まれても、ただでは抱かれない。心通じるまで自分のもとへ通わせる‥貴方には教養がない。残念ながら私は、教養がある女性がタイプです。」

 『ここは今から倫理です。』女子高生に誘われる高柳の返答です。

 

 小学生の頃、地元の偉人を調べるという授業で、私が田沼意次を調べようとしたら「鈴木梅太郎にしなさい。」と教師に言われました。

 理由を聞いても、明確な返答は返ってきませんでした。

 私は、幼い頃、祖母に歴史資料館に連れて行ってもらい、そこで田沼関連の書物等を見た事を現在でも記憶しています。

 その後、歴史の教科書に田沼が出てきても「賄賂政治」としてしか描かれておらず、どこか居た堪れない気持ちになっていました。

 時が経過し、最近数年間歴史家の間で、田沼の評価が変わってきています。封建社会の中、商業に税を導入したり、身分に関係なく良いアイデアは取り入れる姿勢を持つ等、田沼は現在の資本主義のような斬新な考えを持つ男でした。

 今年に入り、私が2歳から過ごし、田沼の所領であった相良に、田沼の象が建立されました。

 時代がようやく田沼に追いついたという事でしょうか。

 

 その田沼ですが、秀吉までとは言わないまでも、低い身分から老中にまで上り詰めた人物です。

 田沼が出世する上で賄賂政治をしていたでしょうが、それに加え、田沼の教養の高さが出世の要因ではないかと推測出来ます。

 「奥庭の 梅の香りを花衣 咲きぬうちに、ほころびにけり」

 女中が障子を破ってしまった時に、田沼が歌った和歌です。

 梅が咲く前に破けた障子から梅の香りを感じる事が出来るという意味です。この田沼の機転により、女中は救われました。

 大きな組織で出世をしていくには、実力とともに、教養が必要とされます。

 まずは才能、次に習慣、さらに教養。

 これが現在、私が考える成功の条件です。